シークレット・ストーリー

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重苦しい家から、逃げて。







A、から。母さん、から。








見たくないもの。気まずいものから、逃げて。








もう、数週間経った。








Aが、母さんが、何をしてるのかも。








元気なのかも、何もかも、知らない。







・







俺が、向こうに連絡しないように。








向こうも、俺に連絡してこないから。







・








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・









いつも、俺は逃げる。








見たくない現実を見たり。








壁にぶち当たったり。








何かが上手くいかなくなると








…すぐに、逃げる。








昔から治したくても治せなかった、癖っていう言葉じゃ済ませられない、もの。








25になった、今も。治らない。









そんな、時だった。









・








・









・









・









「松本、ロンドン行きおめでとう」








「はい、ありがとうございます」









社運をかけたビッグプロジェクトのメンバーに選ばれた上、ロンドン行きが決まった。








本店よりは格は落ちるけれど。それでも、このメンバーの中から選ばれたという、喜び。









NY本店行きが決まった翔さんが、呆然と立ち尽くすのを







ニノも、相葉さんも、俺も。








心配の目を向けていたけれど。








俺の心の中は








喜びと、安堵と。少しの不安と。









……………一つの、決意で。









満ち満ちていた。








ロンドン行きが決定したと同時にした、一つの決意。








…ずっと、ずっと。









向き合っていたようで向き合っていなかった、俺が。









ようやく。…ようやく、正面から向き合う。








…自分の、気持ちに。









Aの、気持ちに。

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