30.誰だって汚いモノは嫌 ページ10
店を出た二人は目的地もなく街をぶらついていると、街頭ディスプレイに緊急速報が映った。生中継のアナウンサーが神妙な表情でニュースを読み上げる。
『緊急速報です。研究施設から巨大なエイリアンが逃げ出しました。政府と研究機関が協力して捕獲班を動かしています。なお、エイリアンは下水道を通って逃亡中とのことです。街に出ないといいのですが』
それと同時に、道行く人々が急に一方向へ逃げ始めた。フラグ回収が早すぎる。青い顔で逃げ惑う民衆は完全に混乱している。
逃げる人々とは反対方向に歩き始める二人の少女。その顔には恐れの色が全く無い。
「Aは安全なトコに行きなよ。アタシが何とかする。昔ね、エイリアンハンターに憧れてたんよ」
「後方支援で援護射撃くらいはできるよ。ちょっと後ろの安全圏からチクチク叩く程度なら大丈夫。さっき組もうって言ってたの、早くも実現できそうで光栄だね」
「違いないね」
なんて、敵に向かう前のカッコイイ言葉を交わして5メートルくらいある、
このエイリアン、ニュースの通り下水道を通って来ている。下水といえばトイレの水。トイレといえば排泄物。下水といえば流し台。流し台といえば生ゴミと油汚れ。
つまり、エイリアンはとっても汚れていたし、とっても臭かった。とにかくとってもとっても汚いのだ。
なので──。
対峙した瞬間、Aと綸榭は踵を返して一目散に逃げ出した。
「ねぇ綸榭! エイリアンハンターになるんじゃなかったの?」
「あんなの触りたくない! Aこそ、服の下にイロイロ隠し持ってんでしょ?」
「走りながら撃つのはたぶん無理! 外す自信ある! でも背に腹はかえられん!」
Aは懐からピストルを出し、エイリアンに向けて撃った。
──やった、当たった!
当たるには当たったのだが。
致命傷には至らず、撃ったことで怒らせてロックオンされてしまった。ピストル一発くらいでは火力が足りない。
今やエイリアンは完全にAを狙ってきている。
「ヒェェェ逆効果じゃん! 綸榭のバカ!」
「撃ったのはAでしょ! そのせいでアタシまで巻き込まれてんじゃんか!」
必死な二人は醜い責任のなすりつけ合いまで始めてしまった。手を組むのは絶望的である。これが人の醜き心である。
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時