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「阿伏兎、この水飲む?」
「なんだ急に。飲みかけの水なんて誰が飲むか」
意図が分からないといった様子で阿伏兎が返す。Aはその反応を見て、やはり阿伏兎は無関係だと結論を出した。知っているなら、中身が減っているのにAが起きていることへ疑問を持つはずだ。
だから、知っている彼女が教えてあげることにする。
「これね、睡眠薬が入ってるの」
「──は?」
彼はもっと意味が分からなさそうに声をあげた。
「神威が私に飲ませようとした。私が寝たと思ったら、どこかへ消えた。阿伏兎、何か知ってる?」
「待て待て、俺は何も知らねェ。団長が姐さんに睡眠薬だなんて、気づいたんならその場で聞けなかったのか?」
阿伏兎の疑問はある大前提を無視している。何も無ければ、Aも忘れていたことだが。
「そしたら次は力ずくで私を眠らせるかもしれないよ? 一時的か
「さすがに姐さん相手にそこまでしねェだろうよ……」
「わからないよ。阿伏兎は神威が私に薬盛るって思ってた?」
「…………」
乾いた笑みで皮肉るAに阿伏兎はそれ以上何も言えなかった。それに満足したのか、Aはグラスを近くのテーブルに置いた。
「今の話を総合すると、要するに阿伏兎は今回の件について何も知らなくて、神威が今何してるかも知らないってことだよね」
「団長が俺の知らねェとこで厄介事起こしてんのはいつものこった」
諦めたような遠い目で言う阿伏兎。普段の苦労が詰まった一言だ。
Aはそれをスルーして深掘りする。
「神威が阿伏兎や私から隠したいことって何か心当たりある?」
「そうだなァ、今思いつくのは俺が同士討ちを好まねェのを──」
「同士討ちってことは夜兎……綸榭?!」
「まさか団長……」
「綸榭が危ない!」
Aは合点がいった。これを隠すためだったのだ。仕事か、戦闘への好奇心か。どちらかなのかは重要ではない。友達である綸榭を、神威が殺そうとしているということが重要である。
──なんで……さっきは一緒にエイリアンを倒してたのに。
せっかく綸榭と仲良くなれたと思っていたのに。神威にとっては友達ではなかったのだろう。
──あれ、そもそも神威って友達いたっけ?
なんて失礼なことまで考え始めたので、思考を戻す。今必要ない議題は考えるだけ時間の無駄だ。
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時