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脇目も振らずに逃げていると、前方に神威が歩いていた。昨日買った最強Tシャツを着ている。何気に気に入っているようだ。
Aは神威の陰に隠れて助けを求める。
「神威! 今すぐ私を助けて!」
「どうしたのA──何あれ?」
神威はAと綸榭の後ろにいる汚物、もとい蛸型エイリアンを視界に入れた瞬間──。
Aを脇に抱えて逃げ出した。
「ちょっと神威! あんた最強でしょ! 何とかしてよアレ!」
「やだよ汚い」
「よく返り血浴びながら笑ってんじゃん! 今さら汚れとか気にすんなよ!」
「俺そういうキャラじゃないから。俺が汚物にまみれて戦う場面なんて見たい?」
「ちょー見たい!」
「アタシも!」
神威の横で走る綸榭がAの言葉に同意した。
Aと綸榭は神威を人身御供にする気満々である。自分が助かるためなら何でもするのだ。それが人の醜き心なのだ。
「君ら今すぐここで殺そうか?」
「アレに殺されるくらいなら綺麗に死ねる方がマシかも……」
「アタシも……」
醜き心でも死ぬ時は綺麗でいたいのだ。汚ったない死体よりは綺麗な死体になる方が遥かにマシなのだ。
張り合いのない答えに神威は調子が狂ってしまう。
「……ところでさ、アレはAを狙ってるよね。何かしたの?」
「迎撃プランAが失敗したから、プランBに移行してる最中なの」
「そのプランBは何するの?」
「強くてカッコイイ上司を頼る! これぞできる社会人の報・連・相!」
プランBの全容を聞いて神威は呆れ顔になる。よくもまぁこの状況でつらつらとそんな台詞が吐けるものだ。
「随分と口が回るね。それだけ余裕なら今すぐ手ェ離そうか」
「ぎゃーごめんなさいヤメテ私を置いて行かないでぇぇぇ!」
神威がAを抱える腕の力を落とさない程度にほんの少し緩めると、無理やり身体にしがみついてきた。落とされないよう必死に抱きつくあまり密着している。
しかしAにそんなことを意識している余裕はない。夜兎の二人と違って体力もスピードも低い彼女はここで落とされたら確実に一人取り残される。必死の形相である。
「わかったわかった、落とさないから離してよ。くっつかれると走りにくいから」
「ふぅ、危なかった」
作者のつぶやき
神威が見た瞬間逃げ出す敵って何だろうと思ったらこんなのが爆誕してました。
すまんのう/(^o^)\
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作者名:夢宵桜 | 作者ホームページ:https://lit.link/dreamfairy
作成日時:2024年3月25日 21時