6mm.

☆.たなか こうすけ。 ページ33

.






きみは嘘つきだ。




ちゃんと見てるよ、って言った
応援してるからね、って言った
またね、って笑った





全部、全部、嘘だった。







『体調はどう？』

『…最近、すごい良いよ』

『そう、良かった』

『広輔くんのおかげかもね、』








振り返るときみは笑顔ばかり。

涙を見せてくれることもなかった。







『日本代表に選ばれたんだって？』

『うん』

『すごいね、さすが広輔くんだ』

『…Aのおかげかもね、』








あの日だって、楽しそうに笑ったじゃんか。

あれも全部、嘘。








『しばらく来れないけど、平気？』

『、当たり前じゃん』

『なんかあったら連絡しろよ』

『分かってるよ』








結局俺の携帯にきみの名前が表示されることはなく
初めてかかってきた電話が
2人のサヨナラを、代わりに告げた。









『ここからちゃんと見てる』

『うん、』

『応援してるから頑張って』

『…これが終わったら温泉にでも行こうか』





そういえばきみの瞳には悲しみがあって、
それを当たり前のことのように見過ごしていた。







『いいね、それ』






最後に触れた髪の感触が徐々に薄れていく。
いつかは消えてしまう。

きみの触れた感覚も、愛しい声も。








『行ってきます、』

『行ってらっしゃい…またね、広輔くん』








それならいっそ、


Aと過ごした時間も、
Aが俺に伝えた｢スキ｣の言葉も全部嘘ならいい。





A、もう1度笑って。

そして、言ってよ。



「 全部 嘘だよ 」ってさ。






〔 口先だらけのラブソング 〕








お題は｢炭酸水｣様よりお借りしました。

☆.かめい よしゆき。→←☆.あさお たくや。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す