2番目に好きな人【Sho】 (ページ4)

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奇跡はありえないくらいすぐに起こった。
翌日、バイト帰りにまた街中で、バッタリと平野紫耀に会ったのだ。

本当に、普通に、歩いてた。

バイト疲れたなー。
今日の夕飯何かなー。
あ、あの課題いつまでだっけ。

そんな考え事をしながら人混みの中を、周りの人にぶつからないように気をつけながら歩いてた。

でも、「あ」とお互いが声に出したのはおそらく同時で。
5メートルくらいの距離があったと思う。
ごく自然に、普通に友達に偶然会ったかのように、平野紫耀と出会ってしまったのだ。

「えっと、名前なんやったっけ」
「…やっぱり忘れてるじゃないですか」

ほらねやっぱり。
この人たちは、女の子が喜ぶ言葉なんていくらでも知っていて、それをいとも容易く言えてしまう。
ましてやそれが仕事だ。

勝手に舞い上がって、ドキドキして馬鹿みたい。
簡単に信じてしまった自分が恥ずかしい。

今すぐにでもこの場から逃げ出したい。
そしてもう、二度とこんなふうに街中で会いたくない。
そう、震える手のひらをギュッと握った時だった。

「嘘やって」

「Aちゃん、やろ？」

前言撤回だ。

驚いて顔を上げると、からかうような目で平野紫耀は私を見ていた。確信犯だ。

「覚えたって言うたやんか」

目を細めて笑う顔はまるで子どもみたい。
知っていたけど。

「俺の勘は正しかったなー！」
「え？」
「だってまた、バッタリ街中で会えた。ま、こんなすぐ会えるなんて思わんかったけど」
「ですね…」

この後どうすればいいのか。
奇跡がもう1度起こったからといって、偶然はあくまで偶然で。
私とこの人の人生は、交わることなんてない。
またどこかで会えたらいいな。
そんな淡い期待だけ残して、”さよなら”とお別れすればいいだけの話だ。

そう思っていたのに。

「なぁ、この後時間ある？ちょっとお茶でもしていかへん？」

この人は馬鹿なのか。
アイドルという、ジャニーズという自覚はちゃんとあるのだろうか。
こんな普通の、どこにでもいるような女の相手して。
ましてはジャニヲタで、しかも自分の友達のファンだと宣言している女だというのに。

でも、もっと馬鹿なのは私の方だ。

「はい」と満更でもない様子で、あっさりと誘いに乗ってしまっているんだから。
単純だ、私は。
ほんとタチが悪い女だ。

でも満足気に、私が断らないのが分かっていたと言わんばかりにフッと微笑んだ貴方の方がよっぽどタチが悪い。

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