2番目に好きな人【Sho】 (ページ17)

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あと30分ほどでバイトが終わる。
今日は日曜だから混んでいていつもの倍は疲れた。

バイト先、変えようかなぁ…
ここ最近の悩み。
今のバイト先は働きやすいし、人もいいから好きだ。辞める理由なんて一つもない。

でも。
この場所には。この街には。
紫耀くんが溢れすぎている。

来る度に、馬鹿みたいに苦しくなるのが嫌だ。
ちっとも好きが消えてくれないのが辛い。

はあ…

溜息なんてついたところで、心のもやもやも好きも何も消えないのに。

「いらっしゃいませー」

バイト仲間の声で、俯いていた顔を上げた。

「っ…」

息が止まるかと思った。

どうして。

またごついサングラスにマスク。

もう会えないと思ってたのに。会わないと決めたのに。
どうして貴方はいつも、いとも簡単に壁を飛び越えてきてしまうの。

紫耀くんは、レジに立つ私の前まで真っ直ぐ歩いてきた。

今貴方はどんな顔をしてる？
私はどんな顔をしてる？

「アイスコーヒー1つ。それと…」

さも普通に注文を続けるかのように言った。

「今日何時まで？」
「は？」
「言わないとサングラスとマスク外して街中で大声で名前叫ぶけどええ？」

痛いところをついてきた。
そんなこと平野紫耀にさせられる訳ないじゃないか。
冗談なのは分かってる。
でも彼は、こう言ったら私が断れないのを計算済みなんだ。一種の脅しだ。

「10時…」
「ん、分かった。待っとるから」

お金を支払って、アイスコーヒーを受け取ると彼はサングラスを外した。

「な、」
「今度は逃げんといてな？」

目尻に出来たシワが愛おしい。
そんな優しい瞳で私を見ないでよ。
まるで好きだと告げているような、熱くて甘い瞳に毒される。

ズルい。全部全部彼の方が一枚上手だ。

全身が熱い。
心をガチガチに固めたはずの決意の紐がほどけかけて、心がぐらぐら揺れる。

「またね」

彼は、私の心をこれでもかってくらい掻き乱して、呑気に手をひらひらさせながら店を出て行った。

微かに残った甘い香りが涙腺を刺激する。

「誰！？」
「彼氏！？」
「この後会うの！？」

怒涛の質問攻めは適当に流しておいた。答える余裕なんてなかったから。

私は本当に、この後彼と会うのだろうか。
会って何を話すのだろうか。
…私はどうしたいのか。

ぐるぐるぐるぐる。

暗闇に浮かぶ一つだけ確かなこと。
紫耀くんが好き。たまらなく。

会いたいな。早く会いたい。
ああ、もうダメかもしれない。

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