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慧「あ!A!」
「慧、なんで…」
検診が終わる頃に病院に慧が来ていた
今日は仕事のはずじゃ…
慧「仕事巻いてきたんだよ…Aが心配で」
「…ありがとう」
そう言うと深く被った帽子から彼の笑顔が見えた
彼は私の荷物を持って私の手を取って歩き出す
慧「帰ろう」
「うん…」
こういう当たり前の幸せの時間もいつか忘れていくんだと思うと
悲しいけど、私は今を生きることしかできない…
慧を残して…私は先に遠くに行けないといけない
だから…
「慧あのね…」
慧「ん〜」
「…子供を…作りたいの」
慧「うん…ほぇ?!」
「私…お母さんになりたい」
私の最後の夢を貴方と叶えたい
慧「き、急にどうしたのっ」
「…私、今もいろんなことを忘れてる…残るものがないと思ってた…でも、慧と私の残る何かが欲しいの
うまく言えないけど…」
私の精一杯慧に届いて欲しい
結婚して子供を授かることが当たり前だと思ってたけど私には難しいことなのは
1番わかってる…
慧「…本当はさぁ…先に伝えるべきだったんだけど、Aに先越されちゃったや…ちゃんと伝えようってずっと思ってたんだけど…覚悟決められなくて…でも今決めた」
「?…え」
慧のいつも持ってる仕事のバックから小さな箱が出てきた
見慣れた病院の帰り道で
彼は帽子を外して私の前に跪いて
慧「僕と…生涯を共にしてください…」
「…っ」
プロポーズされた
忘れられないプロポーズ
「もちろんっ…」
私は彼を抱きしめて彼も私を抱きしめる
優しい初夏の日差しが私たちを包んだ
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