隣の病室の伊野尾慧くん (ページ14)

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慧「恋かぁ…してないことは、ないけど」

「そっか…」

耐えられなくて下を向く
あからさますぎ…
私ってこんなに子供なんだな…
伊野尾くんの恋バナなんて聞く心の準備なんて
これっぽっちもないのに

慧「なに急に、俺の恋に興味あるの？」

そう言っていたずらっ子のように笑う
それはまるで本当に生きている青年のようで
太陽の光で肌の色は生き生きしていて、とっても眩しい
ずるい……
ずるいよ伊野尾くん
これで興味があるって言ったらあなたはどうするつもりなの？
そんなことが頭の中を駆け回って何も言えずにいると

慧「…でも俺の恋はもう……叶わないからなぁ」

「え？……」

慧「だってそうじゃん？死んでるし」

ははって空笑いをする伊野尾くん
やっぱり好きな人がいるんだ、だからここにいるのかな？
そんなこと彼に聞けるはずもなくて…

やめて、そんなに悲しそうに笑わないで

「…そんなこと…ないよ」

慧「……？」

「…だって、私まだ伊野尾くんのこと見えるし、触れるから
その子もきっと、待ってるはずだよ」

綺麗な彼の肌を撫でるとふわりと初夏の風が吹いて
2人の髪を揺らす
もし、私達が普通の体なら…病気なんて無縁な元気な体なら
もっと素直で可愛くいれたのかな？