隣の病室の伊野尾慧くん (ページ13)

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✿ ページ13

それから伊野尾くんとの距離は友達なんかじゃなくて
もっと近しいものになった

慧「ねぇ〜A〜」

昨日も

慧「ねぇ？聞いてる？」

今日も

「聞いてる！！…うわっ」

慧「あぶね…っ」

彼は私の隣に居て
私の隣で笑ってる

慧「危なっかしぃなAは」

「あり……がと」

もう、気づいてる
自分の気持ちに
でも、彼はもうこの世の人間じゃない

私を受け止める彼の体は今日も
氷のように冷たいから

慧「天気がいいのに外に出れないのって辛いよね〜」

そう言いながら私の病室の窓際に手をついて
太陽の光に手を伸ばす伊野尾くん

その体は透けていて今にも消えてしまいそうで
だけどとっても綺麗だった

だからかな……

「……伊野尾くん……恋ってしたことある？」

そんな儚い彼に
こんな質問したのは

慧「……恋？」

今思えばなんでこんなことを聞いたのか
もしかしたら恋をしたことがあると彼が言ってくれたら
諦めがつくかもしれないと、この時は思っていたんだと思う

「……恋ってなんだろうって……思ったの」

彼の隣に立って太陽の光を浴びる
憎たらしいくらいに外は快晴だった