❀ ページ12
慧「…薮先生、Aちゃんと話がしたいからさ」
そう言うと薮先生は私達の顔を見て察したのか
立ち上がった
薮「おう、俺も伊野尾と話がしたいからまた来るよ」
慧「…うん…あ、このことは誰にも言わないで…｣
そう言う伊野尾くんの顔はいつにも増して寂しそうで
そしていつにも増して優しかった
薮「わかった、誰にも言わないよ…じゃ、またねAちゃん」
「はい、お忙しいのにありがとうございました」
そう言うと薮先生は背を向けて手だけヒラヒラと振った
ピシャリとドアが閉まって私と伊野尾くんだけの空間
沈黙…
辛い
「…あ、あの…」
慧「…」
「…伊野尾くん…？」
怒ってる？
表情が見えなくて分からない…
慧「Aちゃん……」
「はいっ！」
慧「っ…ははっそんな身構えないでよ怒ってないよ」
「…う…ほんと？」
伊野尾くん気がついてたんだ
それなのに…約束…破っちゃったな
「…ごめんなさい、ふたりの秘密って言ったのに」
今更自分のしてしまったことに後悔する
直接彼に聞けばよかっただけなんじゃ？って
もう遅いけど……
慧「でも、それくらい俺の事が気になってたってことでしょ？」
「……そ、それは……｣
気づかないうちに彼は私の目の前まで来ていて
少し背の低い私のほっぺたを綺麗な手で掴まれる
慧「……？違うの？」
ずるい…ずるいよ伊野尾くん
そうやって可愛い顔されたら私が
何も言えなくなるって分かってるくせに
「……(ﾌﾙﾌﾙ」
慧「ならいいよ、許してあげるその代わり…」
ニヤリと笑うとそのまま……
「…んんっ！！」
慧「…お仕置っ！ふはっ、可愛い」
ゆっくり彼の顔が近づいて来たと思ったら
ふわりと触れるだけのキスをされた
1度目とは違ってなんだか暖かさを感じたのは……気のせい？
「…可愛くないっ！伊野尾くんのバカ！」
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