隣の病室の伊野尾慧くん (ページ11)

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✿ ページ11

慧「…話せないんだ？」

「…」

慧「俺には話せなくて、薮には話せるんだ」

背中にピッタリくっついてる伊野尾くんの体温が
みるみる冷たくなる

薮「伊野尾もうその辺にしてやって？Aちゃん困ってる」

慧「…っ」

薮先生のその言葉にハッとしたように
伊野尾くんは私から離れた

薮「…ってか、俺も伊野尾がいることにビビってるんだけど」

やっぱりそう…だよね
伊野尾くんは元々薮先生の知り合いで
亡くなってることも知ってるわけで
どういう亡くなり方をしたのかも分かるわけで…

慧「俺も…自分にビビってる」

そんなこと言わないでよ
否定して欲しかった
私の考えていたことがパズルのピースみたいに
合っていく

「…やっぱり……伊野尾くん……は」

慧「…死んでるよ、俺」

「…っ」

そうだよね、だって隣の病室いつも空き部屋だったし、私はその事を知った上で子供達の噂をほんとかのように信じてた。
それは子供たちの前だからだったのかもしれない、私の少しの好奇心だったのかもしれないけど本当に誰か隣に居たらいいのにってずっと思ってた。

だから、伊野尾くんに出会ったあの日、本当に隣の病室に人がいて内心とっても嬉しかった。
だから伊野尾くんは幽霊なんかじゃなくて本当に入院してる、生きているって信じていたの。

というより、信じていたかった。