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「ありがとう、ほんまに」
「気にすんなや、幼馴染やろ
困った時はお互い様
ま、流石に成績はあげられんけどな」
そうだ
あの日以来学校には行っていなかった
受験生だと言うのに勉強さえ進めてない
「はあ、そうやったわ
受験諦めるかあ」
「ま、ぼちぼち頑張りや〜」
ゆるくそう告げると
神ちゃんは今度の大会の準備をするからと帰ってしまった
持つべきものは幼馴染だ
まだ言葉も知らないうちからずっと一緒にいたんだ
心の深くで結ばれた絆は
時に会わずとも通じるところがある
心強い仲間がいる
それだけで少しでも強くなれた気がした
さて、まず妹のために何ができるか
頭でごちゃごちゃ考えてもまとまるはずもなく
まだ使っていないノートにそれを書き写すことにした
内容はいたって単純だった
島に連れてくる
友達を作ってやる
楽しい話をたくさん聞かせてやる
そんな目標は
いつしか自分の願望に変わっていた
暗い部屋で、顔を上げることさえできなくなったであろうあいつに
この青い海と広い空を見せてあげたい
ちゃんとした飯を食っているのかも定かじゃない妹に
美味しいご飯を食べさせてあげたい
笑うことを忘れてしまったAに
笑顔を見せてあげたい
書く手は止まらない
次第に涙が溢れ
嗚咽を漏らしながら書いたそれは
字はガタガタで、読むことさえ困難なものになってしまっていた
誰かを想ってこんなに泣いたのはいつぶりだろう
もしかしたら一度もなかったかもしれない
いつだって周りに守られていた俺は
自分のことでしか涙を流したことがなかった
しげの時もそうだ
何かしてやれないかと悩むことはあっても
それで涙を流すことは一度もなかった
最後に泣いたのは、いつだろう
あの日母に抱きしめられた時だろうか
止まることを知らない涙は
ノートを濡らしていく
A、絶対に助けてやるからな
そう胸に誓い
ぐしゃぐしゃになったノートを机の中にしまった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
