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"人殺し"
"死神"
なんやそれ
親亡くして一番苦しんでるのはAやろ
なんで周りの大人が味方してやらんねん
目の前で家族死んだんやぞ
ほんなら、生きる希望与えるのがそいつらの役目とちゃうんけ
なんで
傷口えぐるようなことすんねん
ふつふつと沸き立つ怒りは
ぶつける場所もなく
俺の拳を強く握らせる
爪が食い込んで痛んでも
そんなことも気にならないくらい頭に血が上っていた
「ばあちゃんな、毎日Aに電話してるんよ
それでも、そんなこと一言も言わん
辛いとか、苦しいとか、痛いとか
何も言わんと泣きもせずにただばあちゃんの言葉に頷くだけやねん」
会ったこともない妹を思い浮かべた
きっと俺と同じように
暗い部屋で膝抱えて過ごしているんだろう
ただ違うのは
あいつは涙を流さない
味方も、1人もいない
「ばあちゃん」
やっと言葉を発した俺を
祖母はじっと見つめる
「A、ここに連れてこよう」
俺がそう言うと
ばあちゃんはにっこり笑って
「私もそのつもりやで」
と言って俺の側に来れば
強く抱きしめてくれた
「流星、もうAにはここしかない
そんなとこで独りにしちゃあかんねん」
「おん」
「頑張ろな、あんたも」
俺にできることは少ないかもしれない
でも、独りで全部背負ってる小さな妹を
ただ救いたい
笑わせてやりたい
その想いだけを抱いて
俺は密かに流した涙を思いっきり拭った
翌日、いつものように来てくれた神ちゃんを部屋に招き入れた
しばらく窓を開けていなかったこの部屋は
少し埃っぽい
それには何も言わず
神ちゃんは俺の言葉を待ってくれた
「まず、いつもありがとう」
「え、おん」
いきなり告げた感謝の言葉に
神ちゃんは少し戸惑ったように返事をする
毎日来てくれたのに追い返し続けていたんだ
まず謝罪よりも、感謝を伝えたかった
そして本題に入るために
神ちゃんをまっすぐに見つめると
彼も何かを察したんだろう
強く頷いた
「俺、妹を救いたい」
「おん」
「やから、力貸してくれへんかな
多分、俺また部屋に引きこもるし
そうなった時連れ出してほしい」
そう言うと、神ちゃんは先ほどまでの表情を崩して
優しく笑みを返してくれた
「アホ、最初からそのつもりやで」
そう言う彼は
やはり俺の幼馴染だ
俺のために、妹のために
すでに覚悟を決めてくれていた
全て分かった上でここに来てくれていたんだ
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
