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後ろから足音が聞こえ、振り返ると
そこにはしげが立っていた
俺より3つ下のそいつは、息を切らし肩で呼吸をしている
走って追いかけてきたのだろうか
「しげ、お前…」
「家から飛び出していくの見えたから
追いかけてきた」
そう言ったしげは
俺の肩に手を置いた
「何かあったんか？」
そう問うしげに
全て話すことにした
両親が亡くなったらしいこと
東京にいる妹が独りになってしまったこと
受話器の向こうから聞こえた
冷たい声とその言葉も
話し終え顔を上げると
目の前のしげはその瞳から涙を流していた
「なんでお前が泣いてんねん」
「流星が、泣かへんから」
そう言って涙を流すそいつは
そういえば泣いているところなど見たことがなかった
妹より少し早く生まれたしげは
本当の兄弟のようにずっとそばで見てきた
俺にとってのあの3人のように
しげにとって俺は兄貴だった
小さい時から転んだって泣かない
むしろ転ばせた張本人の望が泣き喚いていた
それを慰めるこいつを
俺は強いやつだと思っていた
あの子が亡くなった時も
親がこの島から出て行った時も
俺とは違い、こいつは一切涙を流さなかった
それが今、俺や妹を想って泣いているのだ
こんなにも優しいやつだっただろうか
いや、優しすぎるからこそ
こいつは自分を責めることしかできないのか
まだ泣き続けるしげの肩を抱き
おそらく今独りで闘っている妹に
想いを馳せた
まだ実感は沸いていない
何しろその姿も見ていないから
それでも、しげに話したことで薄っすらと感じるこの焦燥感は
やはりこの世に両親がすでにいないことを受け入れようとしていたのかもしれない
あれ以来あっちからの連絡は来なかった
そして俺は、今まで毎日かかってきていた両親からの電話が途絶えたことで
嫌でも2人の死を受け入れることになった
そうなれば、もう何も考えられなくなり
1人部屋で涙を流す日々が続いた
そこから一歩も出ることができず
毎日来てくれる神ちゃんさえも追い返していた
しげは、こんな想いを俺よりももっと幼い歳で味わっていたのか
そう考えると、当時あいつをちゃんと守れなかった自分と
今、妹の側にいることさえできない自分を悔やむ
そうやって何もできないまま
俺やばあちゃんに何も知らされないまま
おとんとおかんは空に昇って行った
それを知ったのは
葬儀から1週間経った頃だった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
