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「お父さんとお母さん、死んでしまったって…」
「…は」
一体何のことかわからず
思考回路が停止する
祖母は、膝から崩れ落ち
その瞳からは涙を流していた
死んだ？
おとんとおかんが？
そんなわけないやろ
何でそんな冗談言うねん
そんなふうに忘れようとしても
それが事実だと言うことは嫌という程わかっていた
認められず
受け入れられず
座り込む祖母に近寄る
すると、まだ通話が断たれていない受話器から声が聞こえた
『あんたの孫娘
えらいことしてくれたな』
低く冷たいその声は
たった一言そう告げた
まるで人間味のないその声は
あとで聞こえた機械音の方が現実味があると感じてしまうくらい
それは例えようもないほど
痛く刺さるものだった
泣き崩れるばあちゃんは
俺が何を言っても聞こえていない
先ほどの男の声
一度も会ったことはないが、おそらく父方の祖父の声だろう
待てよ
おとんとおかんのことは分かった
でも、Aは？
あいつはどうなったんや
"あんたの孫娘、えらいことしてくれたな"
先ほどの声が響く
どういうことや
Aが何かしたんか？
いや、そんなはずはない
俺が知っているのは母が話す妹の姿だけだったが
何かしでかすなんて
そんなこと、絶対にない
その時の俺には、顔も知らない妹に対して
そんな確信があった
両親がなぜ亡くなったのか
その理由さえまだ知らされていない俺は
必死に想像するしかなかった
未だ理解が追いついていない頭は
どんなに時間をかけたって一つの答えも導けない気がした
それでもやっぱり
離れているこの地で一切現実味を感じない俺がこれだけ胸が締め付けられているのなら
妹は、Aはもっと苦しんでいる
そう思うと居ても立っても居られなくなり
気付けば家を飛び出して
船着き場まで走っていた
もう船の最終時刻はオーバーしている
そこに辿り着いたってどこにも行けないことは分かっているのに
進む足は止まらない
案の定、ガランとした船着き場で
絶望し、膝をつくことしかできなかった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
