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俺らが家に戻った時すでに来ていた望と濱ちゃんに事情を問いただされたのは言うまでもない
軽率だった
漁師はそれなりにこういう場面での対策法をしっかりと持っている
それを俺たちは分かっているが
Aが知らなかったのは当たり前だ
それに両親の命日も重なって余裕がなくなっていたというのに
少し考えれば分かったことが
あの時瞬時に判断できなかったためにこんなことになってしまった
「とりあえずAちゃん着替えさせな」
その濱ちゃんの言葉に頷き
申し訳ないとは思いつつも着替えは俺が担当した
目を瞑りながら手の感覚だけで着替えさせるが
うっすら見えた視界に写ったのは
背中にできた大きな火傷痕だった
それを隠すように急いで着替えを終わらせる
初めて見たそれは
俺の聞いた話の中には出てこなかったものだ
まだそこまで古くないその痕は
おそらく叔母に付けられたものだろう
東京での話は未だに詳しく聞いていない
Aがそれを話そうとしないのだから
こちらが聞くのも避けたほうがいいと思っていたから
やはり俺はまだ何もできないでいた
痛む胸を必死に握ってみても
何も現状は変わらなかった
しばらくするとしげはAの部屋に向かっていった
何か話をするのだろう
久しぶりの2人の空間だ
俺たちは何も言わずただじっと待っていた
「A、起きとる」
戻ってきたしげのその言葉を聞き
神ちゃんが名前を呼べばゆっくりと二階から降りてくるA
思ったよりも元気そうだった
みんなも怒ることなく優しく迎え入れてくれた
その日を境に
朝の登校メンバーにまたしげが加わった
望むと楽しそうに話している姿は
何かが吹っ切れたようだった
そしてAも
睦月ちゃんと話をするために
動き回っているようだ
前のように部屋に引きこもることはなくなった
しげも、休みの日になれば望と2人で我が家にやって来る
あともう少しだ
頑張れ
こうやって遠くから応援することしかできないが
いつかAが、しげが本気で笑い合える日は思ったよりも早く来る気がしてきた
10月ももうすぐで終わりだという頃
夕方になり帰ってきたAはずぶ濡れになっていた
わけもわからずそれを出迎えれば
その後ろに同じくずぶ濡れの睦月ちゃん
望の表情は晴れ晴れとしていて
そうか、やっと話できたんや
嬉しさを感じつつ
とりあえず2人のために風呂を沸かした
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
