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夏休みも終わり
約2ヶ月経った10月5日
朝大きな物音が響いた
慌てて妹の部屋の扉を開ければ
ベッドの下で蹲っているA
そうか、今日は両親の命日だ
呼吸を乱し胸を抑える妹を必死に支える
この様子じゃ学校にも行けないだろう
迎えの時間になってやってきた望にそれを伝えると
血相を変えて二階へと上がっていった
今日はそっとしておいて欲しい
そう伝えるとひとつ頷き
肩を落として登校していく望の姿は
それはそれは弱々しかった
ここにきてからこんなに大きなパニックを起こすことは初めてだった
どうしていいか戸惑いながらも
1日看病することを決めた
「こういうこと、結構あるんか？」
「命日は、毎年」
毎年といってもまだ2年目だ
おそらく月命日も合わせてなんだろうけど
長く感じたこの2年間は
彼女にとって錯覚を生むものなのだろう
こんな混乱とずっと独りで闘ってきたのか
そう考えると胸が締め付けられる
俺だけじゃどうにもできそうになかったので
仕事が休みだという幼馴染も呼んだ
楽しそうにゲームをしている姿を後ろから眺めていると
ガタガタと窓が大きな音を立て始めた
今日は雨予報だっただろうか
というよりも、これはすでに嵐になってしまっている
そこでハッと思い出し
勢いよく立ち上がれば
神ちゃんとAの視線が一気に集まる
「どしたん？」
「なあ、流石に今日漁は出てないよな」
神ちゃんの問いかけにそう答えた瞬間
Aが立ち上がり外へ飛び出してしまった
「え、A？！」
一瞬何が起こったのか分からず
神ちゃんと顔を見合わせる
やばい
こんな嵐の中外に出るなんて
どちらかとも無く玄関を飛び出しAの後を追う
「A！！！」
そう叫びながら雨により重くなった服で必死に駆けていると
ふいに横を通り過ぎた人影
その人物は俺らの前を走っていく
しげだ
この嵐で学校も休校になっただろう
帰る途中で見かけたのだろうか
そのまま走り続けるAを追いかけていく
少し遅れて俺らが港に着いた時には
意識を失ったAと
それを守るように抱きかかえるしげがいた
「とりあえず、家運ぶで！！」
神ちゃんの声でやっと冷静になった俺は
Aをおぶろうとするが
しげは離そうとしなかった
「しげ？」
「俺が、守ったるねん…」
そう呟くしげに
俺と神ちゃんは顔を見合わせ頷き合った
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
