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一歩しげに近づく
また殴るかもと警戒している妹にそれを制されるが
笑顔を向ければ
信じてくれたのだろう
躊躇いがちに手を離してくれた
こちらを見つめるしげは
俺が近づくたびに少しずつ後ずさる
一気に距離を詰めれば
体を抱き寄せた
「しげ、お前今なにで苦しんでんねん
それ、俺らじゃ抱えられんもんなんか？」
なあ、力になりたいねん
お前が抱えてるもん全部吐き出せや
あの時はできなかった
ただ傍観者でいることしかできなかった
だからさ、今回くらいは俺にもお前のこと救わせてくれへんかな？
しげは、嗚咽を漏らし泣き始めた
それを強く抱きしめれば
ぎゅっと俺の胸元を握ってくる
立つのも辛くなって来たのだろう
だんだんと下がっていく彼に合わせて俺も座りこめば
より一層手の力が強まった
「おれ、分からんねんッ
どうすればええか、もう何も分からんねん！」
必死にそう叫ぶ彼は
弱々しく、とても脆く感じた
こんなしげは見たことがない
こいつが頑なに俺らに見せて来なかった弱い部分だ
こんなになるまで抱え込んで
俺らはいつでも側におるやろ
もう独りで闘う必要ないねんて
優しく彼の背中を撫でる
ここは、俺に任せて欲しいと妹に目配せをすれば
それを察したように背中を向け帰っていった
「しげ」
しばらくそうしていると
だんだんと呼吸が落ち着いて来たしげに声をかける
少し冷静になったようで
体を離しこちらを見上げるその瞳は
赤く充血していた
「流星…」
「ん？」
まるで小さい子供のような彼は
優しく問いかける
「ありがとう…」
「おん」
小さく呟いたしげは
立ち上がり防波堤に腰掛ける
その隣に座れば
大きく深呼吸をした
「おれ、ごめん
まだ話されへん」
「ええよ
やけどさ、俺たちはいつでもここにおるから
お前は独りとちゃうねん
みんなおるやろ」
「おん…
ごめんな…」
「お前が謝る相手、俺じゃないやろ」
そう告げれば
悲しげな笑顔を向けて来た
アホ、笑えないなら笑うな
お前のそんな笑顔見るためにここまで来たんとちゃうんやから
ありがとうも、ごめんも
まず言うのは俺じゃない
望とAだ
いつまでもお前の言葉待ってるんやから
俺はその一押しをしに来ただけだ
それでも、そう思っていても
やはり何も教えてもらえないと言うのは寂しいものだった
彼の役目はここで終わりや
あとは、お前らの勇気次第や
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
