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もう夏休みも終わろうとしていた8月18日
特に今日と決めていたわけではないが
決心したのがたまたま自分の誕生日だっただけだ
いつものようにやって来た望からAを奪い
散歩のルートを一緒に歩く
やることは決まっていた
しげと、話をしたいんだ
おそらくあの防波堤にいるだろう
いなかったら別の場所を探すまでだ
寄り道をしたいと妹に伝え
防波堤までたどり着いた
隣のAは戸惑っているが
俺は少し前にいるしげを見ていた
彼女もそれに気づいたのだろう
一瞬怯む雰囲気が伝わってきたが
気にせず声をかける
「しげ」
俺たちに気づいた彼は逃げようとするので
その腕を掴み引き止める
やっと決心したんやから
逃さへんで
Aと出会う前よりも冷たくなった瞳は
もう隠す余裕さえないのだろう
俺が何を言ってもその表情を歪ませるだけだった
なかなか喋り出さないしげ
「なんか言えや」
そう急かせば
やっと口を開いた
「どうするって、別にどうもせんやろ」
「このままでええんか?」
「ええよ
Aには小瀧がおるんやろ」
何言ってんねん
Aにはお前しかおらんやろ
何のために望がここまでしてくれてると思ってんねん
何でAがあんなに泣いてると思ってんねん
ずっと、泣かれへんかったんやぞ
望だって、誰かに涙見せることあんなに嫌がってたのに
俺に縋り付いて泣いてんねんぞ
それが誰のせいだと思ってんねん
みんなのこと傷つけて
そんで一番お前が傷ついてるって意味わからんやろ
握りしめた拳は
まっすぐにしげの頰へ向かっていった
尻餅をついた彼は
痛そうに頰を抑えている
「流星っ!」
慌てたようにこちらに駆け寄る妹は
先ほど俺が振りかざした右腕を必死に掴んでいる
咄嗟の行動だった
それでも、心が痛いよりマシやろ
しげは昔からみんなの真ん中にいた
明るくて、アホで
負けず嫌いな彼は
誰にだって優しい少年だった
みんなの真ん中で大きく笑うこいつに
俺は憧れていたんだ
なあ、わかるやろ?
お前1人の言葉で、行動で
いろんな奴に影響与えてんねん
お前が独りになろうとするなら
俺らは連れ出すために動くし
お前が笑えないなら笑かすためにアホなことだってできんねん
それは、初めてしげが俺らに笑顔を見せなくなった時に言ったことだった
伝わっていなかった
伝えられなかった
俺の精一杯の想いは
結局俺の中にしか存在していなかった
それが悔しくて、寂しくて
何でお前は俺らを頼らんねん
ずっと待ってるんやぞ
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作者名:民 | 作成日時:2018年11月3日 16時