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「ちがうの、私が悪いの」
そう呟くAに
俺はやっと目を向けた
苦しそうに顔を歪め
胸をぎゅっと掴んで必死に言葉を紡いでいく
「私が、何もできなかったから
私が、この島に来たから」
「A？」
望が名前を呼んでも
一度下げてしまった視線を上げることはなかった
「私なんて、生まれて来なきゃよかった！
お母さんもお父さんも、私がいなきゃ死ななくて済んだ！！
流星だって傷つけなかった！
しげだって…
全部、全部
私が存在しているせいで…ッ」
そこまで言って、望が抱きしめる
荒く呼吸をした妹は
もう余裕がなくなっていた
そんなことを言わせたかったんじゃない
冷静になって考えれば
望に怒りをぶちまけたことは間違いだった
それで一番傷つくのはAだというのに
まだ母や父が死んだことは自分のせいだと思っている
それに重ねて、しげから突き放されたんだ
もうボロボロなことは分かっていた
それなのに、また目の前の問題を見失ってしまう俺は
妹も、弟も苦しめてしまった
本当は俺が抱きしめたかった
そんなこと言うなって俺が言いたかった
俺よりもはるかに距離を縮めた望には
その行動がすんなりできる
俺は、その場から動くことも何か声をかけてやることもできずにいた
望の手当てをし
神ちゃんに連絡をすると
傘もささずにやって来てくれた
この場を収めることは俺にはできない
2人の傷を抉ってしまった張本人が何を言っても無駄だろう
それからというもの
Aは部屋から出てこなくなった
毎朝望と散歩をして
食事の時以外はずっと籠っている
望の表情も晴れなかった
「流星、俺どうしたらええんやろ」
居間で宿題をしていた望にそう問いかけられる
この質問も、もう何十回とされて来た
答えることはいつも同じ
「そんなのお前次第やろ」
たったそれだけだ
ごめんな、俺らには何もできへんねん
お前らの問題なら、それはお前らで解決せな意味ないやろ
と、言いつつも
実際どうしたらいいのか分かっていないのは俺も一緒だった
Aと出会って
前のように笑えるようになったしげに何が起こったのか
望に分からないなら
俺らにわかるはずもなかった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
