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それからAより少し前を歩いていると
後ろから大きな足音が聞こえてきた
いつものことだ
おそらく望だろう
そう思った時にはすでに彼はすぐそばに居て
回されそうになった腕を間一髪で避けた
俺を見かければすぐに抱きつこうとする
流石にこの歳になるときついものがある
それを避ければ
「ちょっ！なんで避けんねん！」
なんて文句を言われた
望としばらく言い合いをしていると
その後ろにいるAの雰囲気が変わったことに気がついた
そちらに目を向けると
微笑んでいる妹が目に入った
それが嬉しくて俺も笑顔になってしまう
望はやっとAの存在に気づいたのか
顔だけ後ろに向かせれば
「うぇ！？誰！？流星の彼女！？」
なんて大声で素っ頓狂なことを言うので
「アホ！」と一括しておいた
なぜみんな忘れているんだ
だいたい分かるだろう
Aが自己紹介をすれば
それに返事をするように望も名前を述べる
握手で結ばれたその手をブンブンと振り回すので
妹の顔はだんだんのしかめっ面になっていく
望の手を掴んでそれをやめさせれば
やはり痛かったのだろう
Aは握られていた右腕を摩っていた
「まあ、話してるからなんとなくわかると思うけど、色々あったし
学校はじまってもよろしくな
仲良うしてやってくれ」
そう伝えれば
少し真剣な顔をして頷いてくれる望
普段はヘラヘラしているが
彼もまた友達思いの優しいやつだ
しげがああなった時
一番側にいたのは望だった
みんなにはある程度のことは話している
もちろん詳しいことは何も言わないが
両親が亡くなった後
Aが酷い扱いを受けていたらしいことはやんわりと伝えていた
望は、その話を聞いて怒りに震えながら
「島に来たら俺らに任せてくれ」と頼もしいことを言ってくれた
学校が始まれば俺らよりも多くの時間を過ごすことになる
望だったら心配なく任せられる
今朝の様子を見た限り
きっとしげも力になってくれるだろう
頼もしい弟たちを
俺は何よりも信頼している
特に望は
きっとAに笑顔を運んでくれるだろう
いつだって俺らを笑かせてくれる彼は
なによりも人の笑った顔が好きだ
昔から誰かが笑うその時に
必ず側にいたのは望だった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
