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また涙が流れる
もう、自制は効かなくなっていた
こんなにも小さな体で
どれほど大きなものを抱えていたのだろう
誰にも相談できず
誰にも頼ることさえできず
責められる言葉や視線と独りで闘って
いつの間にか笑顔も涙も失って
そうやって自分を必死に守ってきた彼女は
自分よりもはるかに強い人間だった
背中をトン、トンと撫でてくれる小さな手は
優しく俺を包んでくれる
どうしてあの時
彼女に会いに行ってやらなかったのか
ただ自分の勇気がないだけで苦しめてしまった
せめて電話で伝えてやれば
もっと早く現状は変わっていたかもしれないのに
ごめんな
こんな弱い兄貴で
その想いは
言葉にならずに嗚咽として出て行った
その後、淳太が現れた
何だかよくわからない会話を交わす2人は
かつての知り合いだったらしい
世界狭すぎやろ
元家庭教師と元生徒
意外な接点に驚きを隠せなかった
そもそも家庭教師をやっているなんて話聞いたこともなかった
案の定濱ちゃんと照史も驚いていた
こいつは昔からそうだ
聞けば何でも話してくれるが、自分から話すことはほとんどなかった
昼頃、昨日約束していた島案内をすることにした
早くこの島に慣れて欲しいし
何よりもみんなに会わせたかったから
約3名は意図せずに会いに来たけど
島を歩いていると、野良猫がやってくる
この島は猫が多い
いつからこんなに増えたのかはわからないが
妹は猫を見かけると必ずそこに駆け寄っていく
野良猫が珍しいのか
1匹ずつ丁寧に相手をしていくその姿は
母を思い出させた
母も猫が大好きだった
まだこの島にいた頃は飼っていたこともあった
いつの間にか逃げ出したそいつは
今でもたまにそこらへんで見かけるから
元気にやっているらしい
「猫、好きなん？」
と言う質問に
わからないと言う趣旨の回答をするA
「それを好きって言うんよ」と言えば
納得するように何度か頷いていた
俺が先を行けばちょこちょこと追いかけてくる
合わない歩幅を合わせれば
ゆっくりと隣を歩いてくれる
それが嬉しくて
胸が暖まっていく感覚があった
妹とはこういうものなのか
初めて感じるこの存在は
少しくすぐったい
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
