・ ページ26
抱きしめた腕から
温かいぬくもりが伝わってくる
母によく似た匂いと
トレーナーに本当少し残った父の匂い
締め付けられる胸はどんどん苦しくなる
ゆっくりと感じる鼓動は
俺を安心させるには十分だった
「俺な、おとんとおかんに同時に会ったことはほとんどないねん」
そう言うと
妹の頭がピクリと動いた
急にトーンの下がった声に
びっくりしたのだろうか
それでも、すぐに決心したように
少し背筋を伸ばした
母がここから去った日のこと
Aがこの島に来た日のこと
どうやって俺が生きてきたか
そして、父と母が亡くなったと聞いた日のこと
俺の話を真剣に聞いてくれるAは
じっと瞳を見つめてただ黙って耳を傾けてくれていた
気付けば、涙が頬を流れていた
抱きしめているため泣き顔は見られていないはずだ
話し終え、まだ涙が止まらない俺は
Aに腕を回したままだった
「よかった…
来てくれて…」
全て本心だった
あの事故が起きてから、約1年半妹は独りで耐えていたんだ
もう来てくれないんじゃないかと諦めかけて
何もできないんじゃないかと弱気になって
それでも、今こうして目の前にいてくれる
それだけで十分だった
「ありがとう
話してくれて
私ね、流星に嫌われてると思ってたんだよ」
Aのその言葉に
勢いよく体を離す
まさか、そう思われていたとは知らなかった
たしかに一度も会いに行かなければ
電話さえしなかったが
まさかそんな、嫌うはずなんてないのに
「なん、で…」
そう聞けば
少しうつむきがちに答えてくれた
「だって、私は流星からお父さんもお母さんも奪ってしまったでしょ
4歳の流星からも、18歳の流星からも」
その言葉にもう一度妹を抱き寄せる
さっきよりも強く
絶対に離さないように
奪われたなんて思っていない
たしかに4歳の時は嫉妬したけど
恨んだり、憎んだり
本気でそんなこと思ったことない
むしろ、全て背負わせてしまったことを
何もできずに立ち竦んでいたことを
妹に謝りたかったのだから
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
