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小さな音が響き
それによって目を覚ます
ぼーっとする頭のまま
ベッドから出ることはできなかった
一階からは朝食のいい匂いがする
扉が開く音がし、誰かが入ってきた
小さな指で肩を突かれる
妹だ
「流星、朝だよ
もうご飯できてるよ」
小さな声で発せられるそれは
まるで起こす気がないようだった
目を開き、振り返ると
びっくりしたように目を見開く妹の顔が写った
「起きとる」
そう伝えると、呆れたような顔をして
フッと息を吐き出した
そのまま立ち上がり
どこかに行こうとする妹の腕を引けば
こちらに勢いよく倒れ込んでくる
「いた…」
そう呟いたのは俺だった
反転した体にのし掛かったのだ
そりゃ痛いに決まっている
そうさせたのは自分だけど
妹は一度埋まった顔を上げ
「起きてるならそう言ってよ」
と呆れ顔のまま話した
起きてると言っても先ほどのノック音で起きたのだからそれは無理な話だ
「起きたけど眠いから起きれへん」
そんな子供のようなことを言えば
妹は体を起こし
こちらに手を伸ばしてくれる
無意識に浮かんだ笑みは抑えられなかった
なんだかんだ言って優しいやつだ
それを掴み、起き上がれば
そのままの勢いで抱きしめてみた
それは、少し差し込んだ扉からの光で彼女がきているぶかぶかのトレーナーが見えたからだった
父のトレーナーだ
相当なお気に入りなのか
寒い時期にこちらにくるときは必ずこれを着てきた
事故のことを聞いたとき
もちろんそれを着ていただろうと思っていたからもう二度と目に触れることはないと思っていたんだ
それが、今目の前にあるということは
父はあの日これを着なかったのか
それとも、ここに来る時だけ着てたのか
「出かける時も、いつもこれ着てた」
その妹の言葉で理解した
本当にお気に入りだったのに
何の因果か、その日はこれを着なかったのだ
その事実に
なぜだか胸が締め付けられる
どうせだったら着ていて欲しかった
そのまま、持って行って欲しかった
妹を抱きしめる腕に力がこもる
少し苦しそうに息を吐くAを
気にしている余裕などなかった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
