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手を繋ぎながら海を眺める2人
どれくらい時間が経っただろうか
悴んだ自分の手に息を吹きかける
真っ赤になったそれは、完全に冷え切ってしまっていた
手袋もして来ればよかった
早朝の海辺は寒い
こんな時間に起きることは仕事の日くらいなので忘れていた
日が昇った空は暖かい光を運んでくるが
それに包まれる2人とは対照に
日陰にいる俺には届いていない
そろそろ寒さが限界に達していた
息を吐いて一歩踏み出すと
2人がこちらを振り返った
「探したで」
なんて嘘だが
ずっとここにいましたなんて言えるわけない
ゆっくりとそこに近づくと
しげが俺の名を呼んだ
そうか、まだ紹介してなかったな
「しげ、おはよう」
日差しに目を細め、彼に微笑みかける
俺の言葉に反応したしげは、立ち上がりこちらに歩いて来る
それを追うようにAも来た
「おう、流星」
小さく挨拶をするしげは
いつも通りだった
会話をする中、無言で俺たちを交互に見つめるAに気がついた
置いてけぼりにしてしまったか
そんな妹の腕を引き
しげの後ろから自分の横に移動させる
「こいつ、藤井A
もしかしたらチラッと聞いとるかもしれへんけど
ずっと東京におった俺の妹
今年からこっちで暮らすんやわ
お前と同い年やから、よろしくな」
妹紹介をすると
隣の彼女は少しムッとしていた
自分で自己紹介したかったのだろうか
「東京…」
そう呟いたしげを見ると
顔を俯きがちにしていた
東京、そうか
こいつにとってはあまり思い出したくないものだった
あの子も、東京から来ていたから
しげに呼びかけると
少しずつ視線がこちらに向く
「大丈夫やから」
たったそれだけ伝えれば
顔をバッとあげたしげと目があった
先ほどまでのゆるい表情はどこに行ったのか
一気に張り詰めてしまっている
「こいつ、重岡大毅
お前と同い年」
20cmほど下にいる妹にそういえば
返事をして視線をしげに戻した
小さく挨拶を交わした2人は
俺が入ったことで変な雰囲気になってしまっている
やっぱり、何も言わずに帰ればよかった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
