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しばらくそのままドアに凭れていると
「あー！！！！思い出した！！！！」
大きな声が響き渡った
声の主は照史だ
いつの間に来たのか
気配さえも気づかなかった
扉を開ければ
向かいの開きっぱなしの扉の向こうで
照史がAの前に座っているのが見えた
「照史うるさいねん！」
という濱ちゃんの声を耳にし
俺も声をかけることにした
「なにしてんねん」
呆れ顔でそう言えば、照史は勢いよくこちらを振り向く
その顔は嬉しそうに笑っていた
「おー！流星！これお前の妹か！」
Aを指差し
これ呼ばわりとは
こんなにも失礼なやつだっただろうか
Aも困ってしまっている
「これ、言うなや
そ、俺の妹
結構かわええやろ？」
俺がそう言えば
照史は視線をAに向ける
恥ずかしくなってしまったのか
俯いてしまった妹の顔を両手で掴み
じっくり見るように目を合わせる
「綺麗…」
そう呟いたのはAだった
照史の瞳に吸い込まれるように
それをずっと眺めている
その顔は、妹ながらに綺麗だと思った
「ありがとう！」
そう明るい声を出し
おそらくニカッと笑ったであろう照史
照史の笑顔は少し父に似ている
小麦色の肌も、そのものだ
一階から濱ちゃんの声が聞こえ
照史はそのまま居間へ戻ってしまった
その扉の先をずっと見つめているA
「大丈夫か？」
そう聞けば、聞き返すように首を傾げた
もう一度同じ問いをすれば
小さく頷く
質問の意図は伝わっただろうか
俺にとっては薄れてしまった母の匂いも
妹にとっては敏感に察知できるのだろう
先ほどと様子が違うことに気がついていた
目線を窓の外に向けたAの横に寝転ぶ
茜色の空は
俺の視界には写らなくなった
あの空を見ると未だに思い出す
あの日、船着き場まで駆け抜けた日を
その時の気持ちを
鮮明に思い出してしまう
だからあんまり好きじゃ無いんだ
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
