青い夏-Another story- 《流星編》 (ページ3)

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9歳になったばかりのある夏のこと

雪も溶け暑さがやってきたこの島に
母がやってくると電話をかけてくれた

あの日以来、夏になると母や父は週に1回程度帰ってきてくれていた

母は俺に勉強を教えてくれ
父は思いっきり外で遊んでくれた

そんな両親に、俺はいつか覚えた怒りさえも忘れていた

いつも通りの母の電話に、俺は明るく返事をする

先週は忙しくてどちらも来れなかったから
会うのは約2週間ぶりだった

『あ、そんでな
明日なんやけど』

そこまでいって、母は言葉を途切る
母が一つ息を吸う気配がして

何故だかこっちも緊張してしまった

『Aも、連れて行こうと思て』

その言葉を聞いた途端
心臓が飛び跳ねる感覚があった

別に妹なんだし
あいつはまだ6歳だし
そりゃ連れてくることもあるわな

そう納得させようとしても
なかなか受け入れられないその言葉は

未だに妹に対して嫉妬心を抱いている証拠だった

まだ1歳だった妹が
知らないうちに6歳になって
自分の前に現れる

その未来をうまく想像できなかった
数年の月日は
こんなにも妹との距離を深めていたのか

母の言葉に曖昧に返事をし
明日妹を迎え入れるための心構えをする

それでも、なかなか取れないモヤモヤは
翌日の朝になっても残っていた

結局、朝から淳太の家に押しかけ
眠るそいつを無理やり起こして相手をしてもらった

「お前、朝っぱらからなんやねん」

そう聞かれてもなにも答えない

ずっと無言な俺に
彼は何かを察したようだった

「母さん、来るんやないの？」

「おん…」

「迎え行かんのか」

「おん…」

小さく返事を返すことしかできない俺に
流石の淳太もやきもきしていた

心配そうに覗き込む顔を見つめ
これは事実を話すしかなさそうだ

「妹が、来んねん…」

「えっ」

淳太は驚いたように目を見開いた
妹の話をみんなの前でしたことはほとんどないし
俺の気持ちをわかってか、みんなも話を持ち出すことはなかった

だからこそ
俺の口から妹と出たことに驚いたのだろう

そこから先は、なにも聞いてこなかった

しばらくして来た濱ちゃん、照史、神ちゃんも
それを知ってか知らずか

俺になにも言わないまま、聞かないまま
いつも通りに過ごしてくれた