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「よかった…
崇裕くんがA担いで慌てて入ってきたときはびっくりして心臓止まるかと思ったわよ…」
縁起でもないことを言う祖母の言葉に
俺は妹に謝罪を述べる
「俺のせいやんな？
俺が、おとんに似てるから」
初めて、自分の顔を恨んだ
父によく似た顔は、自慢だったけど
そのせいで妹を混乱させたら意味がない
こんなこと言ったら父に怒られるだろうか
それとも、眉を下げ困ったように笑うだろうか
「何言ってんねん、別に流星のせいちゃうやん」
そう言って隣に座ったのは濱ちゃんだ
俺を安心させるようにゆっくりと背中を撫でてくれる
「違うから…
お、お兄ちゃんのせいじゃないから…」
次に妹は俺に向かってそう言った
その言葉はとても助かるが
それよりも"お兄ちゃん"と言う言葉に違和感を覚えてしまった
いや、間違ってはいないんだけど
なんだかムズムズする
聞き慣れない、言われ慣れない呼び名だ
まだAがこの地にいたのは赤ん坊の時
もちろんそう呼ばれたことは一度もないし
母も父も俺を名前以外で呼んだことは一度もなかった
「あんさ、その、お兄ちゃんってやめへん？」
そう言うと、何を勘違いしたのか
Aは辛そうに眉を下げた
言い方が強かっただろうか
ただ、もう少し近い距離にいて欲しかっただけだ
「あ、ちゃうねん！
あの、さ、お兄ちゃんって言われ慣れとらんし、なんかこしょばいねんか
せやから、名前とか、なんか別の呼び方の方が落ち着くねん」
必死に弁解をすれば
Aは納得したように頷いた
まだ祖母に抱きしめられたままの妹は
少し苦しそうに動く
そろそろ離してやればいいのに
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
