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「何言ってんねん
誰もAのせいだなんて思ってないで」
Aのその一言は
東京でどんな扱いを受けていたのかを理解するには十分だった
ずっと独りで、涙も笑顔も失ってしまった妹は
どれほどまでに辛い想いをしてきたのだろう
俺の言葉に顔を上げた妹の瞳をよく見てみる
それは冷たく、光を一切取り入れないかのように固く閉ざされたものだった
この歳で、こんな瞳をしなきゃいけないだなんて
全てを拒絶するような瞳に押し潰されそうになる
あの日のしげと重ねてしまった
それを隠すように笑うしげは
いつも辛そうに、苦しそうに右頬に笑窪を浮かべるんだ
なあ、俺らは家族やで
離れててもちゃんと血は繋がってんねん
やからさ、ちゃんと俺を受け入れてや
俺は、俺らは
Aの味方やで
そんな話をしていると
廊下からドタドタと大きな足音が聞こえて来た
祖母と濱ちゃんが戻ってきたのだ
ガラッと勢いよく扉が開けば
祖母が前のめりに入ってきた
「A！」
そう叫びこちらに近づけば
Aを力一杯に抱きしめる
当の本人は戸惑っているようだった
「おばあちゃん…」
少しぎこちなく言うその言葉は
確かに家族に当てたものだった
おばあちゃん、など
呼んだことはあるのだろうか
おそらくまだ実感が湧いていないのだろう
Aは未だ戸惑ったように瞳を揺らしている
祖母は安心したように長く息を吐き出した
俺らが付き添ってはいたものの
心配で仕方なかっただろう
久々に会った孫娘がいきなり担ぎ込まれたのだから
いや、10年という月日は久々という言葉では表せないほど長いものだった
祖母もそう感じているかは分からないけど
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
