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「急に倒れるからびっくりしたわ」
まだ少し怯えている瞳を見つめながら
一歩ずつゆっくりと近づく
避ける様子もないので
その傍に座ることにした
「ごめん、なさい…」
途切れ途切れに呟かれる謝罪は
まるで俺じゃない誰かに当てたもののようだった
「さっき濱ちゃんに言われたやろ、困ったら助ける
それがここの当たり前や
迷惑なんて思ってへんから」
少し強い口調になってしまったが
さっき濱ちゃんが言っていた言葉をそのまま彼女に伝えると
少し安心したように表情が緩んだ
よかった、取り敢えず大丈夫そうだ
そして、ハッとしたように背筋を伸ばせば
「あ、あの、私藤井かすみといいます
今日からお世話になります」
なんて自己紹介を始めるから
自然と笑みが溢れてしまう
「知ってるわw」
そう告げると
Aはキョトンとした顔でこちらを見ていた
まさか実の妹に自己紹介されるとは
思ってもいない展開だった
「藤井流星です
お前の兄や」
俺もそう告げれば、小さく頷く妹
同じ藤井という苗字に
ほんの少しの嬉しさを感じていた
無意識に伸びた右手は
Aの頭に触れる
少しビクッと肩を揺らして
一瞬下に向いた視線をまたこちらに向けてくれた
「よう頑張ったな
話は聞いとるで
ごめんな、全部背負わせて」
口から出た言葉は本心だった
両親が亡くなってから一度も妹に会いにいかなかった俺は、負い目を感じていた
行こうと思えばいけたはずなのだ
それでもそこに足を向けられなかったのは
妹に会うのが怖かったからだ
両親が亡くなったことをこの目ではっきりと自覚することが怖かったからだ
その自分の身勝手が
妹に全てを背負わせる結果になってしまっていた
「そんなこと…
私、私のせいでっ…」
俯く妹は
涙は出ずとも、苦しそうに顔を歪める
胸を押さえ、ぎゅっとそれを掴むと
荒く呼吸を始めた
それを安心させるように頭を撫でてやれば
幾分か落ち着きを取り戻したようだった
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
