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「ん…」
しばらくすると、小さな声を漏らしてAが目を開いた
いつの間にか立ったまま寝てた俺は
それに気づかなかったふりをしていた
「目、覚めた？」
濱ちゃんの優しい声が響く
おそらく彼は、その声にふさわしい柔らかい笑顔を向けているだろう
「はい、ごめんなさい…」
小さく響くのは聞き慣れない声
初めて聞く妹の声は
少し震えているようだった
不安げで、儚いその声は
とても澄んでいて聞き取りやすい
濱ちゃんの「起き上がれる？」の声とともに
Aが体を起こす気配がした
目を開けてチラリと見てみるが
その顔はあちらを向いていて表情までは分からなかった
「謝ることないで、この島の人たちはみんな家族や、困った時は助け合う、それが島の生き方やから」
"家族"
その通りだった
この島に住む人間はみんな暖かい心を持っている
誰かが困っていれば助け、助けられ
そうやってみんなが絆を結んでいく
だからこの島が好きなんだ
だから、Aをこの島に連れて来たかったんだ
最初は受け入れられなくても
いつかそうなれるように
俺はそれを願っているんだ
「ばあちゃん呼んでくるわな」
そう言って部屋を後にした濱ちゃん
この空間に俺と妹の2人になってしまった
顔を上げると、扉をじっと見つめるAが目に入った
声をかけようか
少し悩んだけど
流石にこのままもしんどい
「おはよーさん」
発した声は意外にもしっかりしていて
さっきまで不安だった心も随分と落ち着いていた
びっくりしたように俺を捉えれば
少しあげた方を下げ
俺の顔を凝視する
まだ慣れないのだろうか
またパニックを起こさないように
前髪で目を隠した
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
