・ ページ15
「Aちゃん？！」
それを濱ちゃんが支える
胸を押さえて苦しむその姿に
俺は何もできないでいた
「Aちゃん！しっかりしぃ！！
流星！運ぶで！！」
その声に反応もできず
あっという間に妹を背負った濱ちゃんは
家の中に駆け込んで行った
「崇裕くん？え、Aどしたん！！」
「ええから取り敢えず部屋貸して！！」
玄関に入れば、ばあちゃんの慌てた声と
すぐに用意される布団
その間、相変わらず俺は玄関に突っ立ったままだった
しばらくそのままでいると、祖母の部屋から濱ちゃんが顔を出した
「流星」
「…濱ちゃん、俺」
「ええから、そばに居ってやり」
その言葉に頷き
やっと家に入った俺は
妹が眠る祖母の部屋に足を踏み入れる
布団の上ですやすやと寝息を立てるAは
すっかり呼吸は落ち着いたようだ
「びっくりしたわ、いきなり倒れるから」
「ありがとな、濱ちゃん」
「気にせんでええねん！」
そう笑いかけてくれる彼は
昔から変わらない優しいやつだ
おそらく妹が倒れたのは
俺の顔が父に似ているせいだろう
きっと、フラッシュバックしたんだ
俺が妹を見て母を思い出したように
それに混乱したAはパニックを起こしてしまった
「そんな顔すんなや
妹くるの、楽しみにしてたやん」
「おん…」
あからさまに落ち込む俺を慰めるように
そう言って背中を撫でてくれる濱ちゃん
いつまでたってもこの人は俺の兄貴だ
「Aちゃん起きるまで一緒に待とうな」
安心させるように優しくそう言った彼は
妹が眠る布団の傍に腰掛けた
少し離れた壁に寄りかかる俺は
妹に近づく勇気をまだ持てていなかった
「流星、こんな事でへこたれてちゃあかんで
これからもっと大変なことやってあるんやし
それを受け止められなきゃそれは兄貴とちゃうからな」
濱ちゃんはAの寝顔を見つめながら言う
彼に兄弟はいないが
ずっと俺らの兄をやっている彼は
俺よりもずっとその大変さを知っている
しげの時も、慌てる俺らと裏腹にドンと構えていたのは濱ちゃんだった
普段抜けている彼は
大事な時には冷静に周りを見れる人だった
その分もどかしい想いもたくさんしてきただろう
「分かっとる」
これからもっと大変なことが起きる
そうならないで欲しいけど
近くにいても、時には離れて見守らなければいけない時もある
きっとその度もどかしさと闘わなければいけなくなるんだろう
それでも、できるだけ側にいてやると決めたんだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ジャニーズWEST」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
