青い夏-Another story- 《流星編》 (ページ2)

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そんなある日のこと
祖母が珍しく体調を崩し寝込んでしまった

そんな祖母を置いて遊びにいけるはずもなく

看病もできない俺は
ただ居間でテレビを眺めていた

電話が鳴り響く
それが誰からのものかわかっていた

だから、無視し続けたのに

延々となり続ける電話の音は煩わしく
結局受話器を取ることにした

「…もしもし」

『え、流星！』

「ばあちゃんならおらん」

『アホ、あんたの声が聞きたくてかけてるんよ』

電話の向こうの母の声は
泣いているのか、震えていたことを覚えている

いつも明るい母の初めて聞く弱々しい声は
幼いながらに心に響いた

『流星、置いていってごめんね
嫌いになったわけじゃないねん
ちゃんと、流星のこと大好きやから』

父と話すときは標準語になる母は
俺やばあちゃんの前だと方言を喋る

それに特別感を得ていたのは
間違いなかった

本当は母を責めようと思っていた

なんで置いていったんや
なんで出ていったんや

ずっと心で叫び続けた言葉は
いざ母の声を聞くと何も言えなくなる

「うん…」

そう頷くと、母は安堵したように長く息を吐き出した

その奥で、赤ん坊の泣き声が聞こえる
妹だ

『あ、ごめん
A泣いてしまったから
また明日かけるからな』

そう言って母の声は消え
代わりに機械音が冷たく響いた

こんな時までも妹か、と少し悔しさを感じた

それでも、久しぶりに聞いた母の声と
見えない涙は

俺の中にあった黒い感情を消し去っていった

子供なんてそんなもんだ

たったそれだけで母を恨む気持ちも妹に対しての嫉妬も薄れた俺は
ただ両親からの愛情を耳で、目で、肌で感じなければ納得できなかっただけだ

母を嫌いになったわけじゃない
妹を突き放したかったわけじゃない

ただ、この島で
もう一度みんなで笑い合いたかっただけなんだ

それでも、もし俺がもう少しでかければ

おそらく母のことを突き放していただろう