流星編 ページ1
俺にはまだ会ったことのない妹がいる
望やしげ、睦月ちゃんと同い年の
3つ下の妹だ
しっかりと血は繋がっている
でも、会ったことも顔を見たことも一度もなかった
厳密に言えばあるが
忘れてしまうほど遠い昔の記憶だった
それを特に気にしてもいなかったし
俺が9歳の時以来島に来ることがなかったその存在は、いつの間にか現実味のないものになっていた
4歳の時
ずっとそばに居た母親は急に東京に行くと言い出した
「なんで！！別にここにおったらええやん！」
「流星…」
「この島が嫌いなん？俺のこと嫌になったん？なあ！俺ここにおりたいよ！！」
小さいながらに、しっかりとした意思を持っていた少年は
母親のいきなりの提案に首を横に振り続けた
この島には大好きな人達がいる
少し抜けたところがあるけど、誰よりも優しい濱ちゃんと、みんなをまとめてくれるしっかり者の淳太、食いしん坊でいつでも笑顔の照史は俺の4つ上のお兄ちゃんだった
そして、いつもそばにいた神ちゃんは
大好きな幼馴染だ
優しい祖母と母と、大好きなみんなと
いつまでもこの島で暮らしていける
そう思っていたのに
妹が生まれ、一年経った頃に
母は俺を置いて東京へ行ってしまった
「お母さん！！！」
船に乗り込む母に精一杯の声を振り絞ってそう呼び続けても
涙を流した母はこちらに戻ってきてはくれなかった
まだ赤ん坊だった妹を抱いて
俺の声に反応することもなく
4歳の秋
母はこの島を去った
それから涙は枯れることはなく
毎日、誰かに縋り付いては泣き喚いていた
その当時は妹のことを恨んだ
俺を置いてまで、そんなにそいつが大事かよ
まだ生まれたばかりで言葉さえ通じない妹に
毎日のように恨みつらみを心で叫び続けた
頻繁にかかってくる母や父からの電話も
俺は一切取らなかった
ばあちゃんから受話器を差し出されても
それを振り払い続けていた
4歳の俺は
あまりにも小さくて
この感情をどこにぶつければいいかもわからないまま
母が島を出て約半年が過ぎていた
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作者名：民 | 作成日時：2018年11月3日 16時
