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だんだんと日が暮れ
辺りがざわざわとしてきた
もうすぐ花火が打ち上がるのだ
「なあ、いつものとこ行こうや」
彼からの誘いに
断る理由もなく首を縦に振った
普段から2人でいるところに割り込んでくるのんちゃんと睦月も
今日くらいは許してくれるだろう
港から少し離れれば
いつも通りの静かな道が続いている
防波堤に腰かければ
真っ暗な空を2人で見上げた
去年はのんちゃんとここに座っていた
去年とは違う、左側に感じる温もりに
胸がキュンと疼いた
数分待てば、空に花が咲き始めた
色とりどりの花には
7色に変化していく
彼に目を向ければ
その綺麗な横顔が花火の光に照らされていた
しばらくその横顔に見とれていると
視線を下ろした彼と目が合う
2人して笑い合えば
もう一度花火を見上げた
「なあ、A」
私は空を見上げたまま彼の声に耳を傾ける
彼も、視線は花火に向いていた
「来年も、その次も
もっともっと先の未来も
ここで花火見ような」
「…うん」
繋いだ左手は
もう二度と離さないように固く結ばれる
「お2人さーん！」
振り返ると、睦月とのんちゃんがこちらに手を振っていた
それに愚痴をこぼしながらも
嬉しそうに笑う彼の笑顔は
私が一番大好きなものだ
「のんちゃん、お誕生日おめでとう」
そう言うと、目を見開いた彼は
ゆっくりとこちらに近づき
私に抱きついてくる
それを受け入れるように彼の背中に手を回せば
「ありがとう」と小さく耳元で呟いた
それは夏祭りが嫌いな彼が
それを好きになれた証のようだった
「おい小瀧！離れろや！」
そんなのんちゃんを力づくで引き剥がそうとするしげと
楽しそうに笑う睦月
一度手放してしまった笑顔は
しっかりと私たちに戻ってきていた
大切なものを失い
独りになりたがった私たちは
またこうして笑い合えているのだから
きっと、また困難が降りかかっても
こうして彼と手を繋ぐことができる
みんなで笑い合うことができる
まだまだ未熟で、未完成な私たちは
傷つけることも、傷つくことももう恐れない
苦しみはいつか幸せに変わる
涙はいつか笑顔に変わる
青い海と青い空から始まった私たちの物語は
これからも続いていく
きっとそれは、虹のように彩られ
三日月のように輝くだろう
そう信じて
私たちの止まった時間は
またゆっくりと進み出した
-青い夏 完-
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ちょぽん(プロフ) - 作品夢中になって読んでしまいました。すごくドキドキして、本当に面白かったです。 (2018年11月7日 17時) (
レス) id: 15a580132a (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - はじめまして。とても素敵なお話で感動しました！ (2018年11月1日 2時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - はじめまして！長編完結まで一気読みしてしまいました。島の風景がはっきり想像できるような情景描写や、主人公達の細やかな心理描写に胸が打たれました。AnotherStory楽しみにしています！！ (2018年10月27日 19時) (レス) id: ed4a5c8a01 (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 長くなりましたが、こんなにも素晴らしい作品を読むことが出来て、公開して頂けて嬉しいです！長文失礼致しました。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 是非とも実写で見たいと思う思わせてくれる作品だと思いました。クリアに想像できる風景。こちらがお話に引きずり込まれるような描写。本当に言葉が出てこないほど素敵な作品です。言葉にするのが難しいですが、今までサイトや本を読んだ中で一番の作品です。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：民 | 作成日時：2018年10月24日 17時
