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そこまで話終わると
目の前の彼は涙を流していた

それを拭ってやれば
彼の視線は私へ向いた


「これが、私が隠してた過去」

そう言えば
彼は私を抱き寄せる

荒くなった呼吸は
私の耳元で聞こえていた


「どう思った?」

「わからん、分からんけど
俺、お前のこと離しちゃあかんって思った」

「そう…」

嗚咽をあげ泣き続ける彼は
苦しくなるほど強い力で抱きしめてくれる

それが、今の私には心地よかった

改めて思い出した記憶は
未だに鮮明に脳裏に浮かぶ

それに苦しむことがなかったのは
しげの温もりがしっかりと伝わっていたからだった


「なあ、A」

少し落ち着いたのか
呼吸はまだ少し乱れているが
彼は私から体を離ししっかりと目を見つめてくれる


「お前は、死神でも、疫病神でもない
やって、俺らに笑顔を運んできてくれたんやから
せやから、もう1人で抱え込むのやめや
俺も、みんなも、Aの事大好きなんやから
いつでも力になりたいって思ってるんやから
頼りないかもしれへんけど、頼ってや」

そう言う彼の瞳はキラキラと輝いていて
まるであの三日月のようだった



「俺らさ、三日月みたいやな」

しばらく時間が経ち
あたりは暗くなっていた


「え?」

「やってさ、色んなもん失って
欠けてしまってさ
それって三日月みたいやない?
ほら、これみたいに」

彼はにーっと笑い頰に三日月を作り出す
久しぶりに見たそれは
私の傷痕を思い出させた

彼は私の前髪をめくり
その傷痕を見つめる


「お揃いやな、俺ら」

お互い、大切なものを失った
彼は想い人を
私は両親を

そんな欠けた三日月達は
2人寄り添うことで半月になる
そこにみんなが加わることで
やっと満月になるんだ


「あ、大事なこと忘れとった」

「ん?」

空に浮かぶ三日月を見つめ
彼は言葉を紡いでいく


「一回しか言わんっていったけど
もっかい言うわ」

彼の視線がこちらを向く
それに合わせるように、私も月から目を逸らした


「俺、Aの事が好きや」

そう言う彼の頰は紅く染まっていて
やはり彼はシャイ岡なのだ


「うん、私も好き」

どちらからともなく触れる唇は
お互いの体温を高めていく


責めて欲しかった彼と
責められたくなかった私は

今、どちらもせずにお互いを受け入れる


たくさん傷つけて
たくさん傷ついて

そうやって成長していく私たちは

いつか失った希望も、夢も、未来も
しっかりと見据えて


ゆっくりと、それでも確かに
前に進んでいた

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設定タグ:ジャニーズWEST , 重岡大毅 , 小瀧望   
作品ジャンル:恋愛
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ちょぽん(プロフ) - 作品夢中になって読んでしまいました。すごくドキドキして、本当に面白かったです。 (2018年11月7日 17時) (レス) id: 15a580132a (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - はじめまして。とても素敵なお話で感動しました! (2018年11月1日 2時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - はじめまして!長編完結まで一気読みしてしまいました。島の風景がはっきり想像できるような情景描写や、主人公達の細やかな心理描写に胸が打たれました。AnotherStory楽しみにしています!! (2018年10月27日 19時) (レス) id: ed4a5c8a01 (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 長くなりましたが、こんなにも素晴らしい作品を読むことが出来て、公開して頂けて嬉しいです!長文失礼致しました。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 是非とも実写で見たいと思う思わせてくれる作品だと思いました。クリアに想像できる風景。こちらがお話に引きずり込まれるような描写。本当に言葉が出てこないほど素敵な作品です。言葉にするのが難しいですが、今までサイトや本を読んだ中で一番の作品です。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年10月24日 17時

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