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そんなある日、何かあったのだろうか
叔母はいつも以上に機嫌が悪かった
その地雷を踏まないように
慎重に行動していたはずなのに
そんな時に限ってコップをひっくり返してしまった
地面に叩きつけられたそれは
音を立てて割れ
近くにいた叔母の足に小さな傷を作る
それが引き金となったようで
叔母は顔を真っ赤にして
支離滅裂なことを叫び散らせば
火にかけてあったフライパンを手に取り
私の背中にそれを押し付けた
背中に伝わるその熱は
それは尋常じゃないほどのもので
言葉で表すことは難しいほどの苦痛だった
叫ぼうとしても、痛みと熱さで何も出てこない
それに必死に耐え
私が意識を失いかけた頃に
やっと叔母は正気を取り戻した
そのまま逃げるように出て行った叔母を
追いかけられる力は残っていなかった
話を聞いて来たのだろう
従兄弟のおばさんが救急車を呼んでくれ
私はすぐに入院になった
その火傷の痕は
今でもしっかりと背中に残っている
おそらくこれは
叔母と私と従兄弟しか知らないだろう
その日から、叔母は私の元に顔を見せることはなかった
学校に行けば
皆、好奇の目で見てくる
それにも耐えられず
教室には行かないでずっと保健室で過ごしていた
高校に行くつもりはなかった
だからといって働くつもりもなく
中学卒業と同時にこの世を去ろうと思っていた
結局、先生からの猛反対により
定時制の高校に進学した
その頃になれば
従兄弟のおばさんも家に来ることはなくなり
誰にも会わず1人で暗い部屋で蹲っているだけの日々を送っていた
ただ1人、会話をするのは
毎日電話をかけてくれる母方の祖母だけだった
外に出ることさえ億劫になり
だんだんと登校日さえ休むようになった私は
母と父の思い出に押し潰されそうになっていた
夢も、希望も、未来もあの瞬間に全て消えてしまった
そんな私に残されたものは
あの島だった
もうすぐ二学期が終わる
私はその頃に島に行く決心をした
誰にもそのことは伝えなかった
家にあったものをほとんど売り
必要最低限の荷物だけを持って
新幹線と船のチケットを手に取り東京を出た
家具を売ったお金は
全て叔母の口座に振り込んでおいた
ただ両親の思い出から逃げたかった私は
島での出会いにも
新しい生活にも
何も感情は持たなかった
今度こそ、独りの場所を作るために
そのために島へ向かったあの頃の私は
たしかに何も持っていない
冷たい瞳をした少女だった
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ちょぽん(プロフ) - 作品夢中になって読んでしまいました。すごくドキドキして、本当に面白かったです。 (2018年11月7日 17時) (
レス) id: 15a580132a (このIDを非表示/違反報告)
しょあ(プロフ) - はじめまして。とても素敵なお話で感動しました！ (2018年11月1日 2時) (レス) id: a32bcb43cc (このIDを非表示/違反報告)
ゆうか(プロフ) - はじめまして！長編完結まで一気読みしてしまいました。島の風景がはっきり想像できるような情景描写や、主人公達の細やかな心理描写に胸が打たれました。AnotherStory楽しみにしています！！ (2018年10月27日 19時) (レス) id: ed4a5c8a01 (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 長くなりましたが、こんなにも素晴らしい作品を読むことが出来て、公開して頂けて嬉しいです！長文失礼致しました。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
yuu(プロフ) - 是非とも実写で見たいと思う思わせてくれる作品だと思いました。クリアに想像できる風景。こちらがお話に引きずり込まれるような描写。本当に言葉が出てこないほど素敵な作品です。言葉にするのが難しいですが、今までサイトや本を読んだ中で一番の作品です。 (2018年10月27日 7時) (レス) id: 1250a32edd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：民 | 作成日時：2018年10月24日 17時
