青い夏 四章

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彼女に突き飛ばされ
海の中で尻餅をついてしまう

彼女はもうその先に行こうとはしてなさいなかった
その瞳は私を捉え、じっと見据えていた


「なんやねん…
なんやねん！！なんでAなんよ！！」

そう叫ぶ彼女は、苦しそうに顔を歪める

私は何も言えず
そこから立ち上がることもできず
ただ彼女を見つめていた


「私やって…好きやのに…
ずっと、ずっと昔から大毅のこと好きやったのに！！！」

「睦月…」

「いつも大毅が見てるのは私ちゃうかった
ずっと、小さい頃から3人でおって
大毅の隣には必ず私がおった
せやなのに、あの子が来て
私の居場所を奪って行った…」

あの子、とは
きっと前にしげの部屋で見た写真の中の女の子だろう

時たまに、のんちゃんもその子の存在を仄めかす事があった


「あの子が来てから大毅は変わった
毎日島中連れ回して
私なんか見えてへんって感じで…
いつも隣におったんは私なのに！！
なんで急に現れたその子に取られなあかんねん！！」

ずっと興奮していた彼女は
急に落ち着きを取り戻した

そう思っていたのは私の勘違いだったようで


「なあ、知ってる？
その子な、死んだんよ」

「え…」

いきなり告げられた言葉に思考回路が止まった
死んだ？その子が？
のんちゃんが前に言っていたいなくなったとは、そういう事だったのか


「その頃の大毅のお気に入りの場所は崖やった
もちろんあの子のことも連れて行ってた
毎日あそこで遊んで
濱ちゃんに怒られてたわ」

初めてあの崖に行った時
しげは濱ちゃんに危ないと言われていると言っていた
それはそんな前からあったことだったんだ


「あの子が東京に帰る日な、大毅は辛くてお別れできへんって行かなかったんよ
せやけど、昼過ぎになって私たちのところにきた濱ちゃんは
あの子を探しとった
ほんまやったら帰ってしまった時間なのに
あの子はいつまで経っても船着き場に現れんかった」

私は何も言えない
この先の展開が、もう何と無く分かってしまったからだ

これ以上は、彼女の口から聞きたくない
私は彼の言葉を必死に待っていたのに


「夜になっても捜索は続いたんよ
ほんで、翌日になって
あの崖の下から女の子が見つかった
もう息はしてへんかった」

聞こえないように耳を塞ぐ
それでも、突き抜けて聞こえた彼女の言葉は

私が予想していたものだった

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