花のように (ページ4)

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学校も休みがちになって
自室からほとんど出てくることがなくなったAにほぼ毎日会いに行っていた

その度に必ずどこかに花を咲かせて
一番多かったのは左手首から腕にかけてだった

それが一体何なのか
分からないほど子供ではなかった

『切れば切るほど花が咲くの
血なんて出ないし痛みなんて感じない
私さ、いつから人間じゃなくなったんだろうね』

切なげに笑って、助けを求めるように伸ばした手を
掴むことは俺にはできなかった

彷徨うように揺れた腕は力をなくして項垂れて
もう全てがどうでもよくなってしまったかのように

その瞳から、色がなくなった

彼女が歩いた場所には花びらが落ちる
それを辿って行き着く場所はたくさんの花を抱えたAの元

花咲病
この名前を知ったのは彼女が発症してから1ヶ月が過ぎた頃だった

この奇病による死者が出たからだ
それが大きくニュースで取り上げられていた

体内で何かの臓器が損傷を起こしても
そこに花が咲いてしまうらしい

いつしか全て花に覆い尽くされて
手術で取り除くこともできずに静かに眠りについていくのだという

メスを入れたとしても、そこは切れずに花が咲いてしまうものだから
どうにも手をつけられずに、消えていくのだと

「そんじゃ、また来るわ」

軽く別れを告げて、部屋から出て行こうと立ち上がると
その腕を引っ張られた

不安げな瞳は俺のことを見上げている
またパイプイスに腰掛けると、掴まれていた腕は離された

『シゲは、何とも思わないの？』

「ん？何が？」

『…気持ち悪い、とか…』

伏せられた瞳は左右に揺れている
安心させるようにその頭に手を置けば、ゆっくりと上がった視線が俺を捉えた

「綺麗やで、A」

正直に伝えた
本当にそう思ったんだ
初めて彼女から咲く花を見たときに

こんなにも綺麗なものは
きっとこの世界には存在しないだろう、と

『そう…』

また俯いてしまった瞳はもう二度とこちらを見ることはなかった