花のように (ページ3)

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花咲病、この病には治療法がない
ここ数年のうちに突然現れたものでまだ研究段階

その対象にされたAは研究所の地下に収容されている

彼女の母親は、研究所からの封筒を握りつぶして
苦しそうに顔を歪めてAを抱きしめて何度も何度も謝っていた

このなにもない部屋で、目がチカチカしてしまうくらい真っ白い部屋で

テレビを見ることもラジオを聴くこともスマホをいじることも誰にも合うこともできず

ただベッドの上で何となく1日を過ごすだけ
部屋の隅についたカメラの奥には、胡散臭い研究員がここを監視している

やっと取れた彼女との面会許可は
1週間に一回という制限付きだ

『最近、何か変わったことは？』

「んー、特にないかな」

季節は春になった
撫子色の桜が咲き誇ってここに来るまでの道も綺麗に彩っていた

ただ、そんな見慣れたものよりも
はるかに彼女から咲く花達の方が綺麗だと思ってしまうんだ

「なに…それ…」

そんな声が聞こえて振り返った
そこにはうずくまるAの姿と、何かに驚く女生徒の姿

不思議に思って近づけば、あたりに花びらが散っていた

チラリと見えたAの顔は
恐怖で怯えているようで、驚いたように目を見開いていて

膝をさすっていた手をどかせば
そこから黄色の花が咲いていた

それを見て周りの人が悲鳴のような叫び声をあげて去っていく

「A？」

不安げにこちらに向けられた視線
その状況が瞬時に理解できなかった俺は

「その花、どうしたん？」

呑気にもそんなことを聞いてしまっていた

花が咲いた、そう小さく呟いた声を
未だに鮮明に思い出してしまう