花のように (ページ2)

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白で統一された一室
窓もなければ家具もほとんど置いていない

床にはたくさんの花びらが散り
色とりどりの絨毯を作っていた

中央に置かれた一つのベッド
そこに横たわるのは俺の幼馴染であるA

覗いた手首には綺麗な花が咲き誇っていた

「A」

名前を呼べば閉じていた瞼が開く
それが俺を捉えた瞬間、彼女は嬉しそうに微笑むのだ

辛そうに上体を起こす彼女に駆け寄って背中を支えてやる
また幾分か小さくなったように感じた

『おはよう』

「おはよ、ってもう昼過ぎやけど」

彼女は壁に視線をやる
そこには時計などは掛けられていない
癖付いているのだろう

ハッとしたように口を開いて
顔を歪ませて俯いた

この部屋に来て約1年が過ぎている
彼女に取ってその期間は、一体どれくらい長いものなのだろう

「手首、どうしたん？」

手首に咲いた花に触れる
パラパラと花びらが落ちて行った

まるで血が流れるかのように

彼女に視線を移すと、その表情は晴れやかなものではなかった

「痛くないん？」

『うん、なにも感覚がないの』

切なそうな瞳は伏せられてしまっている

普通怪我をすれば痛いはずなのに
彼女にはその感覚がなくなってしまったらしい

昔、子供の頃
よく追いかけっこで転んで膝から血を流していた彼女は
痛い痛いと泣き叫んでいたというのに

変わってしまったその姿に
まだ追いつけないでいる