涙で光るガラス (ページ7)

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海が荒れた日の翌日は、シーグラスが浜辺にたくさんある。

今日はその影響か、カフェを出てからすぐに見つけることが出来て、海斗くんとボーッと海を見つめていた。

松倉「Aちゃん」

『ん？』

松倉「俺、Aちゃんのこともっと知りたい」

『私も、海斗くんのこともっと知りたいよ』

私は好きだからもっと知りたいんだよ。

海斗くんは、どうして私の事知りたいの？

松倉「オフの日…休みの日が合えばいいんだけど、俺なかなか休みなくて」

『私はたまに朝会えるだけでも嬉しいよ』

松倉「でも、もっと会いたい」

『そりゃあ私だって』

…私だって、平日の朝だけじゃなくて休日にも会いたいよ。

この街から抜け出して、一緒にお出かけしてみたい。

でも、私から誘う勇気なんてない。

海斗くんがもし私に気がなかったら、距離を取られてこのカフェや海に来てくれなくなるかもしれないから。

松倉「今度、夜ここに来てもいい？」

『夜なんてここ何も無いよ』

松倉「Aちゃんがいるでしょ」

平気な顔でそんなことを言ってくる海斗くんは計算高いのか、それとも天然な人たらしなのか。

『…わかった。急でもいいから、来る時連絡して？』

松倉「ありがとう」

時計を見て、私の電車の時間が近づいていることに気がついて

浜辺に入るところにある階段に立てかけていたギターケースを背負い直す海斗くん。

『ずっと気になってたんだけど、ギターってお仕事で使うの？』

松倉「あー、うん。まぁそんな感じ」

『海斗くんって音楽関係のお仕事？』

松倉「音楽…。うん、音楽かな」

『そっか、凄いね！』

音楽関係ってなんだろう。

楽器店？でも自分で持つことはないか。

お仕事の時間が毎日バラバラなら、作詞とか？

あとはバンド？

深堀してほしくなさそうな顔をした海斗くんには、こんなこと聞けない。

知られたくないこと、ひとつやふたつあるよね。

それなら私は無理に聞いたりしないよ。

お仕事を知るより、海斗くんを失いたくないから。

『じゃあ、仕事行くね。またね』

松倉「うん、また」

…でも、我儘を言うなら

海斗くんのこと、全部知りたい。