涙で光るガラス (ページ47)

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色々と考えている間に、どこからか視線を感じた。

…誰かにバレた？だとしたらAちゃんが来ても人の目があるから2人では話せない。

シーグラスを探すふりをして、恐る恐る視線を感じる方向を見る。

砂浜まで降りる階段の所で立ち止まった足元は、海岸に似合わないパンプスを履いていて

ロングコートの裾をひらひらと海風に靡かせている。

手を見たら、雫型の白のシーグラスがついたリング。

…この人、知ってる。

顔を見たらやっぱりそうだった。

ビー玉みたいにキラキラした目をぱっちり開いて、驚いた顔をしている。

俺が大好きで会いたかった人。

立ち尽くしていて、逃げる気配はない。

周りには俺たち以外誰もいない。

…声をかけるなら、今しかない。

松倉「Aちゃん」

『…なんで』

階段から動けずにいるAちゃんの前に立つと、俺の方が低い位置にいて身長差がゼロになる。

『なんでここにいるの…？』

松倉「えっと、店主の独り言っていうか…聞き出したわけじゃないんだけど…」

『あーもう、おじさんのバカ』

松倉「迷惑かなとか気持ち悪いかなとか色々考えたけど、どうしてもAちゃんに会いたくて。怒るなら俺を怒って？」

『…怒れないよ』

松倉「なんで？」

『だって…、私も、会いたかった』

泣きそうなくらい目をうるませたAちゃん。

『最後に海斗くんに会った日から、寂しくて会いたくてずっと、海斗くんたちのYouTube見たりしてて』

松倉「うん」

『でも逆効果で、もっと会いたくなって。自分から離れたくせに、会いたくて』

松倉「うん」

『…会いたすぎて、ファンクラブまで入っちゃった』

松倉「それはありがとう(笑)」

『笑わないでよ』

どんどん溢れてくるAちゃんの涙を拭うと、つけていたリングのシーグラスが透明になって朝日に照らされて光る。

『海斗くんに会っちゃったら、もう離れたくなくなっちゃうよ』

松倉「ごめん。でも俺、急に別れ告げられて連絡取れなくなって本気で心配した」

『…ごめんなさい』

見るからに落ち込んだAちゃんを見たら無性に抱きしめたくなって、階段を上がってAちゃんと同じ段で抱きしめる。

松倉「ねぇ、まだ俺のこと好き？」

『うん、大好きだよ』

松倉「俺も大好き」

腕の中で嬉しそうに"ふふっ"と笑う声が聞こえてくる。