涙で光るガラス (ページ46)

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店主「異動先ではその地に関するプロジェクトを担当しないといけなくて、地元だから詳しいだろって言われて断れなかったらしいんだよなー」

松倉「あの、それって」

店主「ここの海岸ならシーグラス拾えるし、朝イチならここにいるかもしれないなー。…独り言だけど」

松倉「あの」

店主「はい」

松倉「…ありがとうございます」

店主「独り言なので」

そう言って店主はゆっくり地図を閉じた。

松倉「…仕事が落ち着いたら、ちゃんと気持ち伝えてきます」

店主「応援してます」

松倉「ありがとうございます！」

Aちゃんが無事だとわかっただけで良かった。

でも、今いる場所がわかったのなら、行くしかない。

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12月、舞台が大千秋楽を迎えた。

これで少しは仕事が落ち着く。

また黒から今回は金髪…ブロンドにしてみた。

今俺が一番にしたいことは、教えてもらった海に行くこと。

ご褒美みたいにもらえた数日間のオフは平日だった。

…平日の朝なら、きっといる。

新幹線に乗って、Aちゃんがいる街を目指す。

家を出る前にシーグラスのリングを付けてみたらサイズはピッタリだった。

新幹線の始発ではAちゃんの朝イチの時間に間に合わない気がして、ホテルに一泊して翌朝海に行った。

前までAちゃんがいたあの街はカフェがあったし、行ったら居たから何時に来てたなんて知らなくて

店主に聞いておけばよかったな…

どちらにせよ、生活リズムは変わっているだろうから何時かはわからないけど。

今は早朝6時。

海岸沿いを歩いているのは犬の散歩をしているおじいちゃんくらい。

一応変装のためにバケットハットを深く被ってはいるけど、バレなさそうなところでよかった。

特に何かをするわけじゃなくてただただ海岸を歩いてAちゃんが来てくれるのを待つ。

折角ならシーグラス探そうかな。

あの街よりも砂が多い海岸では探すのが難しくて、その辺にあった木の枝で砂浜を掘ってみる。

…もし、このままAちゃんが来なかったらどうしよう。

"海斗くんには海斗くんに釣り合う、可愛くて心の綺麗な子と幸せになってもらいたいな。"なんて手紙に書いていたけど、俺はAちゃんが好きなのに。

何も考えずに会いたい一心で来ちゃったけど、Aちゃんに会えたらまず何を伝えよう。