涙で光るガラス (ページ45)

今日:1 hit、昨日:13 hit、合計:110,009 hit

45 ページ45

.

手紙と箱が出てきて、店主に読んでいいか聞くと"私は席を外しますね"と店の奥へ戻って行った。

【海斗くんへ】

そう綴られた字は丸くて可愛くて。

こんな形でAちゃんが書いた字を見ることになるなんて

【勝手にいなくなって、連絡を返せなくてごめんなさい。

優しい海斗くんのことだから、私の事を責めずに心配してくれていたりするのかな？

最後に海斗くんに会った日、実は会社で急に異動の話が来て、断れずに受けてしまいました。

だから、私がいなくなったのは俺のせいとか思わないでね。

正直ね、海斗くんともっと会いたかった。

今の海斗くんのこと、もっと知りたかったよ。

私の聞き間違い、思い違いじゃなければ、海斗くんと私は両思いだったのかな？

海斗くんには海斗くんに釣り合う、可愛くて心の綺麗な子と幸せになってもらいたいな。

本当は海斗くんの隣に私がいたかった。

なんてね！(笑)

会ったら離れたくなくなるから、異動先は伝えません。おじさんも口止めしてるから、聞かないであげてね

今日は約束通り会いに来てくれてありがとう。
じゃあね、海斗くん。大好きだよ】

そうしたためられた2枚の便箋をしまって、一緒に包装されていた箱を開けた。

松倉「…シーグラス」

中に入っていたのは、シーグラスが入ったレジンのコースター。

そして、小粒で雫の形をした水色のシーグラスがひとつ付けられたリングだった。

店主「…あの子ね、ここに来て私の妻に教えてもらいながら頑張ってそれ作ってたんですよ」

松倉「え？」

店主「元々不器用なのに、納得いくまで小さい頃から集めていたシーグラスを沢山使って作って」

松倉「そうだったんですか…」

店主「あ、お兄さんと交換したシーグラスは別にとってあるって言ってましたけど」

"ちなみにそのリング、ペアで作ってましたよ"

店主のその言葉で、我慢していた涙が溢れて。

俺、めちゃくちゃ無力じゃん…

Aちゃんが居る場所がわからないとなると、もうどうにもできない。

店主「これは私の独り言だと思って聞いてほしいんですけど」

松倉「はい」

店主「Aちゃんの地元、ここ」

店主はいつの間にか持っていた地図を開いて、ある街名をクルクルと指でなぞりだした。