涙で光るガラス (ページ34)

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『私ね、海斗くんと一緒にいれる勇気も自信も無いの』

松倉「どういうこと？」

『海斗くんの周りには沢山のファンの子がいて、その子たちはみんな私なんかよりも長い間海斗くんを見て知ってるんだよ』

松倉「そりゃあありがたいことにファンの子だから」

『普通はね、ファンなんていないの』

松倉「…」

『きっとファンの子の中には海斗くんのこと、1人の男性として好きだって言う子だっている』

私、最低なこと言っちゃいそう。

海斗くんがアイドルでも、海斗くんは海斗くんだし、きっと嘘偽りはないのに。

『そんな子達がいる中で、私なんかが海斗くんと一緒にいる資格なんてない』

松倉「でもAちゃんはアイドルでいる俺じゃなくて、等身大の俺を好きでいてくれてるんでしょ？」

『ファンの子は等身大の海斗くんを見たくても見ることが出来ないんだよ』

売り言葉に買い言葉。

話したいことはこんな事じゃないのに。

松倉「…そう、かもしれないけど」

『お仕事が大事なら私のことなんて気にしないで』

海斗くんは、私の手に触れてそのまま握ってくる。

松倉「Aちゃんのことも仕事も両方大事なんだよ」

『お願い』

そんな事言わないでよ。

勘違いしちゃうよ。

『…もうこれ以上、好きにさせないで』

松倉「ねぇAちゃん、俺心配だよ」

海斗くんが本当に私も仕事も大事だと思っているんだったら、そんなのまるで私のこと好きみたいじゃん。

もし、もしね。

両想いだったとして、私は付き合う勇気があるのかな。

海斗くんの言う通り、苦しむことになるかもしれない。

どうなったとしても海斗くんとは一緒にいたいけど。

でも、遠距離になるなら、元々忙しい海斗くんとは年に数回会えたらいいくらいになっちゃう。

好きなのに会えないなんて、私が耐えられないかもしれない。

松倉「何を抱えてるの？」

『抱えてなんかないよ』

松倉「Aちゃん」

『なに？』

松倉「次、確実に会える日決めよう」

『…え？』

松倉「いなくなりそうで怖い」

海斗くん、勘が良すぎるよ。

次会える日なんて、もうないよ。

松倉「それに、会える日決まってた方が頑張れるし」

『じゃあ、海斗くんがこっちに帰ってきた日の翌朝にカフェで』

松倉「わかった。意地でも行く」

ごめんね、海斗くん。

私その日はもう会えないんだ。

嘘つきでごめんね。