涙で光るガラス (ページ29)

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松倉「めっちゃいい匂い！」

『海斗くんごめんね。豚ロース買おうとしてたのに間違えて豚バラ買ってきちゃったみたい』

松倉「全然いいよ。豚バラの生姜焼きだって、柔らかくて美味しいでしょ」

『ごめんね』

買い物する時、ボーっとしてたからかな。

お皿に盛り付けてテーブルに出すけど、海斗くんはジッと私の顔を見てくる。

松倉「…なんかあった？」

私、気付かれるくらい暗い顔してたのかな。

海斗くんに私の事なんて関係ないよね。

顔に出さないようにしなきゃ。

『ううん、何も無いよ。冷めないうちに早く食べよ！』

松倉「ん、いただきます！」

そういえば、あの雑誌でも落ち込んでいる人とふたりきりになったらっていう質問があって

"声をかけるけど、声をかけてほしくなさそうだったらそっとしておきます"って言ってた。

もしかして、私が言いたくなさそうにしてたから引いてくれたのかな。

疲れてるのに気を使わせてごめんね、海斗くん。

松倉「あ、マヨネーズ…」

『えーっと、付ける人もいるかなって思って』

松倉「ありがとう！俺生姜焼きそのまま食べるのも好きだけど、マヨネーズ付けるのもめちゃ好きなんだよね！」

知ってるよ、さっき読んだもん。

なんだか騙してるみたい。

松倉「Aちゃん」

『なに？』

松倉「ありがとう」

『何もしてないよ、私』

松倉「ご飯作ってくれたでしょ」

『そんなの、どうせ自分も食べるんだし気にしないで』

松倉「俺の事待っててくれてただけでも嬉しいの。だから、ありがとう」

『…どういたしまして』

松倉「Aちゃんって照れ屋さんだね」

『そんなことない』

松倉「ふふっ、はいはい」

海斗くんの言葉はいつもストレートで恥ずかしくなる。