涙で光るガラス (ページ26)

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松倉「Aちゃん？」

『ん？』

松倉「いらないの？シーグラス」

『いる！ありがとう』

手のひらからシーグラスを受け取って、自分が見つけたものを渡すと、海斗くんは嬉しそうに握り締めた。

『ねぇ海斗くん』

松倉「ん？」

『海斗くんって、この交換したシーグラスってどうしてるの？』

松倉「大事に保管してるよ」

『そっか』

今更だけど、海斗くんは迷惑じゃないのかな。

シーグラスなんて、興味無い人からしたらただの海岸に打ち上げられたガラス片でしかないよね。

松倉「なんで？」

『…だって、シーグラスなんて興味無いでしょ？取っておいても使わないだろうし』

松倉「そんなことない」

『もし嫌で無理して付き合ってくれてるんだったら…』

松倉「ねぇ、怒るよ」

『え？』

少し眉間に皺を寄せて見つめてくる。

松倉「俺も楽しくてやってるの。だからAちゃんは変な心配しなくていいよ」

『それならいいんだけど』

松倉「それにね、Aちゃんとの思い出がちゃんと形に残るのが嬉しいんだよ」

『私も嬉しいよ』

松倉「だったらもう俺が無理して付き合ってるとか思わないでね。俺から交換しようって言い始めたんだし」

『わかった、ありがとう』

松倉「ん、いい子」

優しく頭を撫でてくる海斗くんの手は、海風のせいか少し冷たくて、でも心地いい。

松倉「Aちゃんって猫みたいだね」

『猫？』

松倉「ふらっと出てきて、甘えてきたと思ったら急にそっぽ向いたり。掴めない感じ」

『そうかな』

松倉「撫でられたら気持ちよさそうに目細めるとこも似てる」

『それって褒めてるの？』

松倉「褒めてる褒めてる！」

本当に褒めてるのかな。

睨んでみると、海斗くんは"ふふっ"と笑う。

松倉「威嚇されても可愛いだけだから」

また頭を撫でてくる。

…なんだか今日の海斗くん、ものすごく甘い。

『仕事、行かなきゃ』

松倉「うん。約束通り今日も仕事終わりお邪魔するね」

『わかった。ご飯どうする？』

松倉「また遅くなっちゃうと思うんだよね。Aちゃん先に食べてていいよ」

『ううん、一緒に食べたいから待ってる。何食べたい？』

松倉「生姜焼き食べたいかも」

『了解、下ごしらえだけして待ってるね』

松倉「ありがとう」

『こちらこそありがとう。じゃあまたね』

松倉「うん、また」

今日の夜も会えるなんて幸せ。