涙で光るガラス (ページ3)

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秘密にしておくことなんて、簡単。

通勤中の電車でさっき交換した海斗くんのLINEのアイコンを見る。

写真は何故か手作り感満載の豚キムチ。

いつも古着やハイブランドを着こなして古民家カフェに来る海斗くんだけど、意外とシュールな写真を選ぶんだね。

名前はイニシャルの「K」

眺めていると、通知欄に海斗くんからのメッセージ。

K さっきはありがとうございました。店主から本受け取りました

A よかったです!作品の中に入り込んじゃって、1日で読み終えちゃいました

K泣きました?

Aはい!海斗くん程じゃないですけど

Kそれ、恥ずかしいから忘れてください笑

就職してから会社繋がりで連絡先を交換することしかなかったから、社会人になってから初めての友達かも。

なんだか学生時代を思い出して楽しい。

A 海斗くん、次いつカフェ来れそうですか?

レスポンスが早かったのに、急に途絶えた返信。

…がっついてるって思われちゃったかな。

K来週以降は仕事始まるの遅いから行けるかもしれないです!今日本当はもっと早く行く予定だったんですけど寝坊しちゃって…

そっか、予定確認してくれてたのかな。

A 時間ある時にまた来てください

K絶対に行きます!

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そんな約束をして、次の週の水曜日。

松倉「おはようございます」

『あ、海斗くん！おはようございます』

海斗くんが隣の席持ってきたトレイには、いつも通りコーヒーとドーナツ。

あと、もうひとつドーナツ。

松倉「これ、よかったらどうぞ」

目の前に出されたのは、いつもよりひとつ多いと思っていたドーナツ。

『いや、海斗くん食べてください』

松倉「俺の分も買ってあるから、ね？」

『それなら自分の分のお代払います』

松倉「ハンカチ貸してくれたお礼なので気にしないでください」

『お礼ならこの前の本で十分です』

松倉「いいから。一人で食べるより一緒に食べた方が美味しく感じるし、お願いします」

『…じゃあ、お言葉に甘えて』

ふたりでいただきますをして、同時にひとくち食べた。